「飼い主がずっと元気という保証はないから」愛猫家・川上麻衣子が語る、ペットへの責任と向き合い方
2月22日は「猫の日」。女優で愛猫家の川上麻衣子さんは、芸能活動のかたわら、2018年に人と猫が心地よく共生していくための提案をする一般社団法人「ねこと今日」を立ち上げ、猫に関わる活動をすすめている。これまでに5匹の猫を看取り、現在も2匹の猫と暮らす川上さんに、ペットを飼うときに避けられない医療や看取り、保護猫問題に対する思いを聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
◆専門家が見る記事のポイント
犬や猫の平均寿命は約15年。ペットにも「老い」や「病気」の問題が当たり前のようにあることを知ってもらいたく、ペットと一緒に暮らす人・これから家に迎えたいという人に特に読んでほしい【獣医師 石井万寿美氏】
高額化するペット医療費――どんな医療を受けさせるかは「飼い主の意志」が重要
――川上さんが最初に猫を飼ったのはいつ頃ですか。 川上麻衣子: 今から40年ぐらい前、18歳のときですね。小さい頃は団地に住んでいたので、犬や猫などのペットを飼うことはできませんでした。だから、一人暮らしを始めたら絶対にペットを飼おうと決めていたんです。 もともとは犬派だったので、最初は犬と暮らしたいと思っていました。いろいろと犬を見ていたとき、ワンちゃんがキャンキャン鳴いていて、1人で飼うにはちょっと不安だなと思ったんです。ペットを飼うのをあきらめかけていたとき、当時、人気だったヒマラヤンっていう猫に一目ぼれして…すぐ家族に迎え入れましたね。それから、どんどん夢中になって、気づけば猫派です。これまで5匹を看取って、今は2匹と暮らしています。 ――猫を飼うとなると、避妊手術などペットに対する医療費の負担に苦労する飼い主も多いようです。こういった問題に対してどう感じていますか。 川上麻衣子: やっぱり猫が病気になると、莫大なお金がかかってしまいますが、避妊や去勢は病院が協力的なのでそんなに高額ではありません。でも、実は猫はがんが増えていて、医療技術が上がっている分、治療を受けるには高額なお金がかかってしまうんです。まさに人間の高額医療と同じですね。ただ、どこまで治療させるか、歳をとって弱ってきた猫とどう関わっていくかは、飼い主さんが決めること。必ずしも高額な医療を受けさせなければいけない、というわけではないと思います。 もし私が猫だったら、本当に辛い痛みは取ってほしいですが、多少痛いくらいならあとは家でゆっくり寝かせてほしい。住み慣れた家で息を引き取れるなら、それが私の理想です。だから、うちの猫は獣医師さんと相談したうえで、ある程度の段階で治療を止めて、自宅で看取る選択をしています。 ――やはり飼い主がきちんと考えて、選択しなければいけないということですね。 川上麻衣子: そうですね。選択できるということが大事だと思います。でも、正解はありません。そんなときに参考になるのが「うちはこうだったけど、こんな問題点があった」「こんな心残りがある」という選択をした人の話。これはすごく参考になります。 これからペットの医療がどうなっていくのか分からないし、ペット保険がもっと適用されたり、もっと安くなったりするかもしれませんが、いずれにしても、最終的に決めるのは飼い主さん。決めた後に後悔することも必ずあると思います。それでも、強さを持ってペットと向き合ってほしいですね。 ――猫をペットとして飼う人が多い一方、川上さんのようにペットとして飼われていない地域猫を保護する活動をする人も増えていますよね。 川上麻衣子: 野良猫の繁殖をなるべく減らそうという活動をしていると、猫好きの人より意外と猫嫌いの人の方が協力してくれるんです。猫が好きな人はかわいそうだからとご飯をあげてしまう。また避妊手術は自然の摂理に反するから絶対嫌っていう人もいますね。一方で、猫が嫌いな人は、野良猫がいない方が良いですから、できる限り協力してくれます。猫がかわいいとかかわいそうという考えだけではこの問題は進展しない。もっといろんな角度で考える必要があると気づきました。 ただ、保護猫問題のほとんどが実は人と人の問題だったりするんです。だから、どうすればみんながうまく共生できるか、それがすごく大事です。できるだけ行政も入ってくれると良いですね。 日本のペット問題は相当遅れていると思います。もっとオープンな問題にならなきゃいけないし、もっといろんな議論があって良い。ヒステリックに悪いことばかり言っても、反応や反響が大きくなるだけで、事態は好転しません。みんなが優しい気持ち、楽しい気持ちにならないと変わらない。やはり命の問題なのできちんと考えていきたいですね。