底堅い米国経済を背景にファンダメンタルズ重視の業績相場に移行~クオリティを見極める企業分析力がパフォーマンスを左右する展開に~
そして、M7の一部の銘柄についてはバリュエーションの面で割高な水準になっている銘柄もありますが、M7以外の銘柄のバリュエーションは過去の水準と比較して特に割高ではありません。2023年3月末時点で「S&P500」のPER(株価収益率)は23倍と、過去30年間の平均PERである19倍を上回っています。しかしM7を除くPERを計算すると19倍程度と過去平均と同水準となります。つまりM7の平均PERが割高(29倍)で「S&P500」全体のPERの水準が引き上げているということです。ですから、物色人気が集中したM7は割高な水準にあるともいえますが、それ以外の銘柄には、割安な水準にある銘柄もあり、個々の銘柄ごとに判断する必要があると思います。
◆ファンダメンタルズ主導の業績相場に
――今後の米国株式市場の見通しは?
今後は長期金利主導から個別ファンダメンタルズ主導の業績相場へ移行すると考えています。2023年の米国上場企業のEPS成長率は横ばいでしたが、2024年には11%程度の成長が見込まれています。このマーケットの期待に対して、個々の企業がどのような決算を発表し、決算の見通しを語るのか、3月から6月にかけての決算発表が大きなポイントになります。現時点では、2024年の業績は、テクノロジー、ネット小売り、メディア、ヘルスケアといった業種で2ケタ成長が期待され、エネルギーや素材などでは減益の予想になっています。株価は、それらの見通しを反映して好業績株は値上がりし、業績の悪い見通しの銘柄の株価は冴えないものになっています。この現在の想定に対し、実際の業績の差異が、株価を動かすひとつの材料になります。 また、依然としてインフレ率の行方には注意を払う必要があります。FRBもインフレ関連指標を注意深く見守っているところですが、インフレ率が2%の当局目標に向けて持続的に鈍化していると十分確信できるようになれば、5%台という高い水準にある政策金利の水準を引き下げることが可能になります。「利下げ」の動きによって、景気に対する見方や企業の借り入れコストの変化など、重要な変化が起きます。金融政策の方向として「利下げ」に向かうことはほぼ確実ですので、昨年7-10月に見られたような長期金利の上昇がバリュエーションを圧迫して株価を押し下げるという動きにもなりにくいと考えています。