焼きいもの季節にブランドいも 安納いものライバルは?
さらに異色の「べにはるか」系ブランドは浜松の「うなぎいも」。うなぎを加工する際に残る頭や骨などを肥料化して育てたもので、うなぎの味はしませんが、とろり甘い食味。プリンやタルトなど「うなぎいも」を使ったスイーツも多彩です。「浜松を農業から元気にするのが生きがい」と殊勝に語るキャラクターもいる。 砂丘で育てた「べにはるか」を使い、「いもジェンヌプロジェクト」を展開するのは新潟市。同市が1世帯当たりのさつまいも購入量全国2位というのは意外ですが、砂丘での栽培も意外? と思いきや新潟の砂丘ではスイカや大根などの栽培が盛んで、痩せた土地で育つサツマイモは多くの糖を貯め込み甘くなるのだそう。新潟大学の学生や菓子店が協力してモンブランやマドレーヌなど十数種のスイーツも開発。サツマイモのフォルムに砂丘と夕日を投影させたブランドマークは、女性の唇っぽくもあります。 「ねっとり系(粘質系)」のブランドをもうひとつ。本州最南端の和歌山県串本町の農家では「さいぱん」と呼ばれる在来種を「なんたん蜜姫」と名づけてPR活動中です。自家用として長く栽培されていた品種で、こちらもとろりとした食感と糖度40の甘さがウリ。ファン獲得を目指して、会員を募り苗植えや収穫体験、料理教室などを行っています。やや丸みを帯びた外見や鮮やかな黄色い中身も「安納いも」と通じるそう。 「ねっとり系」に押され気味ではありますが、伝統の「ほくほく系(粉質系)」も健在です。加賀野菜のひとつに数えられる「五郎島金時」は、西日本で普及している「高系14号」の選抜改良品種。栽培地である内灘の砂丘は、砂の粒が大きすぎず小さすぎず最良の水はけが絶妙の肉質を育むのだとか。焼きいもは蒸した栗のように上品な甘さで、薄い皮ごとしっぽまで美味しくいただけます。 金時系なら四国徳島には「鳴門金時」が。こちらも「高系14号」の選抜改良品種で県北東部の砂浜地帯が主な栽培地。海のミネラルを吸収して、より美味しくなるといいます。鳴門地方では同門同士、「里むすめ」「松茂美人」「甘姫」など栽培地独自の名前を冠したブランドいもが品質を競い合っています。