治験は継続中でもワクチンが承認される訳とは? - 新型コロナワクチンの安全性評価について専門家が解説
メッセンジャーRNAはとても壊れやすく、長期の影響を与えることはない
とはいえ、データもないのにやはり数年後の安全性が不安だ、という声を伺います。特に長期の安全性としてよく聞かれるのが、「このワクチンは遺伝子が使われていると聞くけど、自分の遺伝子への影響はないのか」といったものです。 今回のmRNAワクチンで使用されている「メッセンジャーRNA」というのは、体に保存されているDNAから、細胞などのタンパク質を作るための中間物質です。メッセンジャーRNAは、凍土の中に埋もれていたマンモスからでも得られるDNAのように丈夫なものとは違い、とても壊れやすく、研究で使う時も、壊れないように細心の注意が必要です。 さらに、予防接種で体内に打たれたメッセンジャーRNAは、細胞の中に入っても、DNAが鎮座する「核」の中に行きつく前にタンパク質を作るために使われてしまったり、分解酵素によって破壊されてしまうのです。 そもそも核の膜の特性上、外側から内側にメッセンジャーRNAが入る仕組み自体がないのです。例えばこれらを何とか免れて奇跡的に核の中にメッセンジャーRNAが入ったとしても、DNAに組み込まれるためには、メッセンジャーRNAからDNAに変換し、さらにDNAの中にうまく入り込むための隙間が必要ですし、その変換したDNAを組み込むための特殊な酵素が必要なので、これらのことは人間ではまず起こらないと考えられています。
一般的なワクチン開発の有害事象収集期間は2~4週間、しかし新型コロナワクチンは1年以上
ワクチン開発の観点からも、一般的な国内ワクチン開発では有害事象の収集期間として、不活化ワクチンで2週間、生ワクチンで4週間が目安と言われている中で、今回のワクチンが1年以上かけて長期の有害事象を探すという点は、むしろ科学的に慎重かつ誠実な姿勢で開発が進められているということがわかります。(※参考文献[3]) ちなみに、「治験が終わっていない」という言葉の連想から、ワクチン接種会場で、実はプラセボ(生理食塩水)を接種される可能性があるのではないか、という誤情報も飛び交っています。 これについて、既に治験の組入れ(治験に参加すること)は終了しておりますし、きちんとした説明と同意を行わずにいつの間にか治験に参加しているということは、どのような場合であってもまずありえませんので、あなたが生理食塩水を接種される可能性は当然ありません。