カマラ・ハリスのファッションに見る、新時代の女性リーダー像
政府の要職に女性が就くことも珍しくなくなった昨今、彼女たちにとってファッションは個人の好みを超えて、政治的なメッセージを発し、自身や国家のブランド力を高め、人々から支持を集めるための重要なイメージ戦略の手段となっている。 【写真】パンツスーツ×パールでキメる! 政治家カマラ・ハリスのパワーユニフォーム
いま、世界ではアメリカ大統領選挙の行方に注目が集まっている。有力候補のカマラ・ハリスを筆頭に、女性政治家はファッションを通じて、どのように自らのブランドを確立し、政治的な影響力を高めているのだろうか。
「パンツスーツ」 で武装し男性中心の政界へ
2016年11月8日、アメリカ史上初の女性大統領になると言われたヒラリー・クリントンが大統領選で敗北したその日、カマラ・ハリスは上院議員に初当選した。「私はヒラリー・クリントンが女性初の大統領になると想定してスピーチ原稿を書いていた」と、当時を振り返る。「当選を確信していた女性大統領候補の敗北」、これはハリスが政治家として初めて目撃した政治イベントだった。
ヒラリーの敗北は、その後の彼女の選挙戦略に大きな影響を与えたに違いない。それからわずか8年後、カマラ・ハリスは、世界で最も強大な権力を持つと言われるアメリカ大統領候補の一人にまで上り詰めた。果たしてヒラリーは、カマラに対してどのような教訓を残したのか。
同じくパンツスーツで大統領選に挑んだヒラリー・クリントンとの違い
ヒラリーは、女性候補としてもてはやされると同時に、選挙戦を通して全方位から攻撃を受け、アメリカ社会において女性が表に立つことの厳しさを身をもって示した。実はこの国では、女性が政治の表舞台に出ることは決して容易ではない。 ある研究によれば、アメリカでは、伝統的に男性が占めてきた役職に女性が就き、強い主張や毅然(きぜん)とした態度といった「男性的」な振る舞いを示すと、女性リーダーへの評価は特に低くなる傾向があるという。 ヒラリーは、選挙期間をパンツスーツ姿で貫き、振る舞いにおいても涙一つ見せない政治家として知られた、まさしく「男まさり」な人物だった。 同じくパンツスーツを着こなすハリスだが、彼女は、女性が前に出過ぎることへの社会の反発を相殺するかのように、「田舎のおじさん」とも評されるティム・ウォルズを副大統領候補として隣に置き、絶妙なバランスを取っている。これはエリート階層の男性たちと同じ土俵で戦おうとしたヒラリーにはなかった見事な戦略である。