性犯罪歴確認「日本版DBS」は課題山積? 子どもの被害防ぐには、識者3人にインタビュー
子どもの心に深い傷を残すとされる性暴力。近年、大手学習塾「四谷大塚」での元講師による盗撮事件や、ベビーシッターが起こした保育中の子どもへの強制わいせつ事件など、教育・保育者の逮捕も相次いでいる。そんな中で、6月に成立したのが「日本版DBS」の創設法だ。英国の制度を参考に、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を雇用主側が確認する仕組みで、2026年度にも始まる見通しだ。 【写真】「犯人は10人未満のうちの誰かだ」重度障害の娘への性加害…でも警察は被害届を一時受理せず 両親は独力で闘い始めた
子どもの安全確保に期待が高まる一方で、日本版DBSが確認対象とするのは「前科」のみ。被害者側と示談したことによって起訴に至らなかったケースのほか、下着の窃盗やストーカー規制法違反は対象外となり、実効性に疑問の声が上がっている。また、雇用主側の度を超した就業制限や解雇も懸念されている。日本版DBSはどんな制度なのか。見えてきた課題を探った。(共同通信=今村未生、松本智恵、小川美沙) ▽優越的な地位背景とした性暴力 性暴力はその後の人生に暗い影を落としかねない。内閣府は2022年、16~24歳を対象に、性暴力被害の実態に関するオンライン調査を実施した。被害経験があると答えた2040人に「最も深刻な被害に最初に遭った年齢」を尋ねると、16~18歳(高校生)が最多で32・7%。13~15歳(中学生)は24・0%、7~12歳(小学生)も15・7%に上っていた。 加害者との関係について複数回答で聞くと、36・0%と最も多かったのは教職員や先輩、クラブ指導者など「学校・大学の関係者」だった。
国は教員らによる優越的な地位を背景とした性暴力への対策を強化している。英国の制度「DBS」(Disclosure and Barring Service、前歴開示・前歴者就業制限機構)を参考に、日本版DBSの創設法「こども性暴力防止法」が6月に成立した。 ▽確認対象は230万人 学校や認可保育所などに、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴確認を義務付けた。こども家庭庁の担当者によると、確認を義務付ける学校や保育所、幼稚園などで現在働く対象者は少なくとも約230万人だという。一方で、塾や放課後児童クラブなどは国の「認定制」だ。 雇用主側はこども家庭庁を通じ法務省に性犯罪歴を照会。犯歴があれば、国は本人に通知する。既に働いている人に性犯罪歴があった場合、配置転換などの措置を取る。犯歴がなくても、子や親の相談を受けた雇用主側が「性加害の恐れがある」と判断すれば、同様の措置が必要だ。 対象は有罪判決が確定した「前科」に限定。不同意性交罪などのほか、痴漢や盗撮など条例違反も含む。照会期間は拘禁刑(懲役刑と禁錮刑を2025年に一本化)で刑終了から20年、罰金刑は10年。このため最長20年就業が制限される。