性犯罪歴確認「日本版DBS」は課題山積? 子どもの被害防ぐには、識者3人にインタビュー
下着の窃盗罪や、人に体液をかけるといった器物損壊罪も確認対象外となり、反対の声が上がっている。創設法の付帯決議に盛り込まれたが、法改正に向けて課題を検討する上で、国はもっと性犯罪加害者の累犯性、余罪の状況などの調査・研究に力を入れるべきだ。加害者が再犯防止プログラムを継続的に受けられる仕組みも求められる。 × × てらまち・とうこ 弁護士、社会福祉士、保育士。一般社団法人Spring理事。 ▽性暴力対策担う人材育成を 日本大の末冨芳教授 これまでは教員が性暴力を起こして懲戒免職となった場合でも、文部科学省管轄外の塾などで働くことができた。日本版DBSの創設により、認定を受けた塾ならば再就職が制限され、再犯防止にもつながると期待している。ただ子どもの被害を防ぐには、性犯罪歴の確認だけでは不十分で、性暴力が起きた際の対応方法やそれを担う人材育成の仕組みを早急に整備する必要がある。
同様の制度がある英国と日本の子ども若者政策を比較分析してきた。英国では、子どもに関わる仕事に就く人のDBSによる性犯罪歴のチェックはもちろん、学校やスポーツクラブなどには、子どものための「安全保護主任」が置かれて、性暴力が起きた際には調査や自治体の報告を行っている。主任については校内に分かりやすく明示され、相談しやすく、子どもたちの「守られる権利」が実現されると感じた。 犯罪に至らないケースの情報共有も進み、教員がSNSで生徒に性的なメッセージを送るなどの事例も自治体に報告されている。日本版DBS創設法「こども性暴力防止法」は学校などに安全確保措置を義務付け、性加害の恐れがあるとみなされた教員は配置転換を求められるが、抑止力を高めるため、英国のように注意が必要な情報を自治体が集約し、一定の条件下で確認できるよう検討すべきではないか。 日本版DBS創設のインパクトは大きい。教員志望の学生の間でも、「子どもへの性暴力はいかなる理由があっても許されない」という認識が広がってきたと感じる。教職課程でも性暴力防止法を必ず扱い、理念を浸透させ、性犯罪が起きた時の対応も学べるようにすることも大切だ。