性犯罪歴確認「日本版DBS」は課題山積? 子どもの被害防ぐには、識者3人にインタビュー
創設法を巡り採択された付帯決議は19項目に及び、早期のガイドラインの策定や、家庭教師など個人事業主に確認対象を拡大することなどを求めている。 日本版DBSの在り方や課題について、性暴力問題に詳しい寺町東子弁護士、英国と日本の子ども若者政策を比較研究してきた日本大の末冨芳教授、治療に取り組む「性障害専門医療センター(SOMEC)」の福井裕輝代表理事に話を聞いた。 ▽本来の立法目的離れている 寺町東子弁護士 日本版DBS制度の導入で、子どもへの性暴力防止への一歩となると期待するが、課題は多い。制度創設の議論のきっかけは、2020年、ベビーシッター仲介サイトに登録した男2人が強制わいせつ容疑などで逮捕された事件だ。しかし、成立した創設法「こども性暴力防止法」は、性犯罪歴の確認を学校などに義務付けた一方、学習塾などを「認定制」とし、ベビーシッターや家庭教師など個人事業主が対象外だ。本来の立法目的から離れている。真に子どもを守る観点に立っているだろうか。
認定を受けた事業者に性犯罪歴の有無を通知する仕組みも問題が大きい。犯歴は高度のプライバシー情報で、外に出してしまうと、更生を妨げ、再犯につながる悪循環に陥りかねない。事業者に犯歴を開示して管理させるのではなく、国の機関を設け、犯歴がないことなどを要件に、子どもに関わる仕事に就く人全員を登録する「ホワイトリスト方式」にすべきだ。これによって個人事業主も登録対象にできる。 子どもに対する性犯罪は、ほかの性犯罪と比べ、発覚しにくく反復性が高いことが知られている。認知行動療法をベースとした再犯防止プログラムによって「引き金」を避けることが重要だ。子どもに関わる職から遠ざけることは、加害者の更生・再犯防止に資する。 不起訴事件のうち、犯罪事実は十分認められるのに、被害者と示談が成立したなどの理由で起訴されない「起訴猶予」が漏れたことも見直しが必要だ。児童・生徒への性暴力で懲戒解雇となった人も対象に含めることを検討すべきだ。