秋吉久美子さん×下重暁子さん 語り合う「歳を取る」と「今を生きる」 大変な時代を生きる若い人たちに伝えたいこと
今年、古希(70歳)を迎えた女優・秋吉久美子さんと、米寿(88歳)の作家・下重暁子さんが、母娘の関係を紐解きながら対談した『母を葬(おく)る』。 【写真】「老いを見つめられるような強さを持ちたい」という秋吉久美子さん 母の人生を振り返り、母と共に生きた時代を語り、母親の年齢に差し掛かった今だからこそわかったこと、これからを生きる人たちに贈りたい言葉とはーー。 時代を超え、新しい「女性の生き方」を切り開いてきたお二人が、年齢を重ねて見えてきたものを、あらためて語り合います。
前後編でお届けしています。本記事は後編です。前編も合わせてお読みください。 【前編】数十年経った今もなお「母を葬る」ことができない ■「30代や40代なんて、つぼみの段階よ」 秋吉 「今さら何を言ってるんだ」なんて思われてしまうかもしれませんが、70歳になって初めて“年齢の実感”が訪れたんですよね。母が亡くなったのは72歳のとき。今の私より2つ上なだけなんです。結構、自分の人生の中ではダイナミズムを感じるというか、未知の領域に入ったなって。
下重 秋吉さんより二回りほど長く生きていますが、私も年齢ってあまり考えたことがない。物理的に、今88歳っていうだけです。一生懸命生きているうちに、気づいたらこの年齢になっていた。 秋吉 日本の場合、「そろそろ結婚適齢期だね」「もう三十路だね」と年齢で区切られることがいまだに多い。やっぱり年齢文化みたいなところがありますよね。 下重 日本だけじゃないかしら、新聞や雑誌で人名が出てくるたび、カッコ内に年齢を書いてあるのは。こちらから「書かないでほしい」って言うとやめてくれるんだけど、やめてくれって言うとなんだか年齢を気にしているみたいに思われそうで。それも癪じゃない?
秋吉 芸能人の場合は、一種の物差しとして年齢と外見を見比べられている気がしますね。「この人、こんな歳だけど若いわねえ、それなら私も」とちょっと勇気をもらえたり、「若いと思ったら、いい歳ね。自分とそう変わらないわ」って身近に感じられたり。カッコづけの年齢は一種のスパイスなのかも。 下重 人間は60歳でひと巡り、還暦っていうでしょ。心機一転、私はそこから年齢を勘定しなおせばいいと思っているの。そうすると、私はまだ28歳。だから、これからやることはいっぱいあって、どうやって生きるかを考えるのに一生懸命。