8万円でRyzen 7 8840U搭載の「Inspiron 14」を激安ゲーミングPCとして買った
「買い物山脈」は、編集部員やライター氏などが実際に購入したもの、使ってみたものについて、語るコーナーです 【画像】確かに8万円ちょいで買えている 「PCをそろそろ買い替えたい」と妻が言う。彼女のPCは7年以上前に買った、Core i3-6100Uを搭載したノートPC。ストレージをHDDからSSDに換装したものの、最近はビデオ通話アプリで動作不良を起こすなど、問題が出てきたという。Windows 10のEOSも近づいており、買い替えるにはいいタイミングだ。 今回、妻のために選んだPCは、Dellの14型ノートPC「Inspiron 14」。その中でも高スペックなRyzen 7 8840Uを搭載したモデルだ。なぜ本機を選んだのか、経緯を語っていきたい。 ■ ゲームもちょっとできる小型ノートが欲しい 妻のPCの主な用途は、オフィス系の軽作業と、ビデオ通話、そしてカジュアルなゲームだ。息子が「マインクラフト」などをプレイしており、そのサポートで一緒にプレイしている。動作が軽めのゲームが多いものの、3D描画性能はそれなりにあった方がいい。 筐体サイズはなるべく小さめ。以前のPCは13.3型だったので、ディスプレイが16:10の比率なら14型相当だ。自宅から持ち出すことはほぼないので、重さやデザインはそれほど気にしない。 このニーズに合ったものから選んだのが「Inspiron 14」だ。スペックは下記の通り。 CPUはRyzen 7 8840U。Zen 4アーキテクチャによる高いCPU性能もさることながら、内蔵GPUのRadeon 780Mが高性能で、最近流行のポータブルゲーミングPCで採用が多い。外付けGPUなしでゲームをプレイするならコレ、というCPUである。 ほかにもメインメモリ16GB、SSDが1TB、ディスプレイはフルHDより縦に少し広い1,920×1,200ドットで、IPSパネルを採用。ゲーミングPCとしても及第点を挙げられる構成で、ポータブルゲーミングPCを買うくらいなら、PCとして活用できるこっちでいいんじゃないかと思う(もちろんポータブル機には別の魅力がある)。 そして本機を購入する決め手になったのは、価格だ。購入時はセール価格で8万3,573円。さらにデルのポイントプログラム「Dell Rewards」に加入し、手続きを進めることで、1,500円分のクーポンを獲得。そして検討中に2%割引クーポンが手に入り(申し訳ないがどうやって獲得したか覚えていない)、最終支払額は8万0,404円となった。 このスペックのノートPCが約8万円というのは、この円安時代にあって異常なほど安い。本当にこれで大丈夫なのかと不安になるほどだ。 ■ まずはベンチマークから 本機の基本的なレビューは実は弊誌で掲載済みだったりするのだが、改めて筆者は購入目的であるゲーミング性能に的を絞って見ていきたい。まずは各種ベンチマークテストを走らせる。 ベンチマークテストに利用したのは、「PCMark 10 v2.2.2704」、「3DMark v2.29.8294」、「PHANTASY STAR ONLINE 2 NEW GENESIS Character Creator」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」、「STREET FIGHTER 6 ベンチマークツール」、「Cinebench 2024」、「CrystalDiskMark 8.0.5」。 本機には統合管理アプリ「MyDell」が用意されており、冷却ファンの設定を4段階に調整できる。このうち最も高いパフォーマンスを出せる「超高パフォーマンス」の設定を選んでいる。 3DMarkの詳細なデータを見ていくと、実行中のCPU温度が50℃くらいに抑えられているのが確認できる。そのためか高負荷時には性能が頭打ちになる場面が見られ、特にCPUのマルチスレッド処理では、クロックがかなり落ちやすい状態だ。それでもエントリークラスのノートPCの枠を超える高性能ではある。 ゲーム系ベンチマークテストの設定は、ゲーミングPCとの比較のため、なるべく最高画質を選んでいる。さすがにどのテストも設定変更を推奨されてはいるが、見るに堪えないほどカクカクな映像というわけではなく、もうちょっとで何とかなりそうなラインだ。画質を落とせばプレイできるものも多いのが分かる。 ストレージはキオクシア製「EG6」の1,024GB。シーケンシャルリードは約6GB/sと十分な性能で、ゲーム用のストレージとしても満足できる。 ■ 実際のゲームを試す 次は実際のゲームでどのくらいのパフォーマンスを出せるのか検証していく。最新ゲームを最高画質で遊べるとは当然考えていないが、画質を落とせば遊べるものはかなり多いと踏んでいる。なお特に明記しない限り、解像度は本機のディスプレイ解像度である1,920×1,200ドットに設定している。 □マインクラフト まずは当初の目的である「マインクラフト」。旧PCでも動作するくらい軽いゲームなので心配はしていないが、どの程度の設定で動かせるのかがポイント。描画距離の推奨チャンク数は37と結構広かった。アンチエイリアシングは2の設定で動かす。 平均フレームレートは約59fpsで、下位1%でも約48fps。十分快適にプレイできるし、かなり遠くの風景まで見渡せる。 □フォートナイト こちらも子どもに人気のFPS(我が家では「レゴ フォートナイト」が流行った)。クオリティプリセット「高」、アンチエイリアス&スーパー解像度を「TSR中」、テンポラルスーパー解像度を「推奨(70%)」に設定し、バトルロイヤルを1戦プレイした。 平均フレームレートは約28fpsで、下位1%だと約7fps。実際にはそこまで重い感じではないのだが、キャラクターが多い場面では最初の表示段階でカクカクすることが多く、下位1%の低さはその影響と思われる。しばらくすると安定してきて、概ね30fpsは出ている。 それでも環境としては不満が残る。まだ画質を下げる余地はかなりあるので、もう少し画質設定を下げてフレームレートを上げた方がいい。クオリティプリセット「中」までであれば、ゲームプレイに困らない程度の画質は得られる。 □Apex Legends FPSからもう1タイトル。画質設定は自動で設定されたもので、概ね中程度の設定となっていた。これでトレーニングモードを1周する。 平均フレームレートは約34fps、下位1%は約27fps。FPSでは物足りない値だが、まだまだ画質を下げられる。もともとフレームレートを上げやすい作品ではあるが、内蔵GPUでも実用的なレベルになってきた。 □ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン スーパーファミコン向けに作られたRPG作品を3Dリメイクしたもの。3D化されたことで高性能なPCが必要になるのではと思っている方のために、こちらも試してみた。解像度は1,920×1,080ドットで、グラフィックスプリセットは「最高」とする。ゲームプレイを開始し、最初のバトルが終わるまでを計測した。 平均フレームレートは約52fps、下位1%で約37fpsとなった。最高画質でもかなり高いフレームレートを維持できているし、RPGなのでそこまで高いフレームレートも必要ない。本機で快適に遊べるだろう。 □ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON ロボットアクション「アーマード・コア」シリーズの最新作。初のPC版であり、昨年発売されてからは、ポータブルゲーミングPCのターゲット作品の1つとしてよく紹介された。今回は映像品質を「低」、自動描画調整は「OFF」にして、ミッション「テスターAC撃破」の出撃中のみ記録した。 平均フレームレートは約35fps、下位1%は約26fpsとなった。フレームレートはもう一声欲しいところだが、画質は最低まで下げている。画質はこの設定でも悪くはないので、とりあえずプレイできる程度とは言える。 □ディアブロ IV 筆者が大好きなハック&スラッシュシリーズ最新作。俯瞰視点ながらしっかり3D描画されており、意外と重め。本作には解像度スケーリング設定があり、「FSR 2」が使える。クオリティモードは「バランス」。クオリティプリセットは「高」にして、キヨヴァシャドからメニスタッドのウェイポイントまで、戦いながら歩いて向かう。 平均フレームレートは約31fps、下位1%は8fps。これも「フォートナイト」と同様、読み込み時のカクつきがあり、しばらくすると安定する。とはいえもう少しフレームレートが欲しい印象なので、画質を下げるか「FSR 2」のクオリティモードを下げるかすると良さそうだ。 □Cities: Skylines II 都市開発シミュレーションの最新作。美しい街並みを作れる反面、描画負荷は非常に高い。今回はグローバルグラフィッククオリティを「低」としつつ、ダイナミック解像度のスケールクオリティは「無効」とし、筆者が作成した人口4,000人程度の街を少し巡ってみる。 平均フレームレートは約18fps、下位1%は約13fps。「グローバルグラフィッククオリティ」はもっと低い「最低」があるのだが、描画の落差があまりに大きく、作品の雰囲気を壊すのでおすすめできない。フレームレートが低くても、そこまでプレイ感を損ねない作品なので、これくらいでがんばるのもあり。ただ街が発展するともっと重くなるため、本機では辛いかもしれない。 □サイバーパンク2077 最後は重いゲームの代表格。クイックプリセットを「低」とすると「FSR 2.1」が有効化されるので、この状態でベンチマークを試す。結果は平均FPSが43.01。 さらにFrame Generationで「FSR 3 Frame Generation」を有効化して試すと、平均FPSは51.73に上昇。これならゲームプレイにも十分なレベルだ。 いくつかのゲームを試して分かったことは、性能的にはまだローエンドのディスクリートGPUにもかなわない。ただ動作自体はレイトレーシングの表現も含めて問題なく、不安定さはなかった。画質を落とすかFSRを活用するなどしてフレームレートを上げれば、ほとんどのゲームはプレイ可能と言えそうだ。 唯一辛そうなのは「STREET FIGHTER 6」のような格闘ゲーム。フレームレートが安定して60fps出てくれないと圧倒的に不利で、本機だと解像度が落ちる「LOWEST」設定でしかカバーできない。競技として取り組むならディスクリートGPUを搭載したPCを用意したい。 ■ 使ってみて感じる不満点もあるが…… ここまでゲーミング性能の話だけをしてきたが、実機そのものの使用感についても触れておきたい。特にネガティブな部分について。 筐体はアイスブルーの色を選んでおり、遠目にはメタリックな印象だが、実際は天板からリストレスト部まで、外装はほぼすべてプラスチック製。見た目の不満はないものの、手に取ると確かに安っぽさやヤワさを感じる。 重量は約1.61kgと、14型ノートPCとしては重め。厚さも16.9~19.9mmで、昨今のノートPCの中では薄型の部類には入らない。 Windows Helloに非対応で、サインイン手続きは手入力。1,920×1,200ドットのディスプレイはIPSパネルで、視野角は十分広いものの、発色は全体的にやや淡く、白っぽさが感じられる。 キーボードのストロークは浅いながらもクリック感があり悪くないが、内部の熱が伝わってきており、中/上段のキーはアイドル時でもほんのり温かい。高負荷時にはさらに熱くなり、ゲームでよく使われるW/A/S/Dキー付近も体温に近いくらいまで温かくなる。触れないくらい熱いとまではいわないものの、不快感を覚える人は多そうだ。 高負荷時には冷却ファンの回転数が上がる。騒音としてはさほど大きくないものの、高めの風切り音が出てくる。ゲームの音を出してしまえばさほど気にならないものの、若干耳障りな音質ではある。 この辺りは確かに気になる点ではあるのだが、筆者にとっては全てが問題とまでは感じない。自宅で使う前提なので筐体の剛性は求めていないし、この重量でも何ら不満はない。ディスプレイの品質も、普段使いやゲームで困ることはない。キーボードの熱は気にはなるが、自宅だったら別の外付けキーボードを持ってきてもいい。 そしてこれらの不満点を考慮しても、「8万円ですよ」と言われたら十分納得できる。誰にでもおすすめできるとは言わないが、筆者としては納得できる品質だ。 もちろん良いところもある。スピーカーは意外とクリアな音が出ていて、小型スピーカーにありがちな尖った感じもなく、音楽のジャンルを問わずそこそこ自然に聞ける。動画視聴やゲームならヘッドフォンを使う必要もない。 電源は65WのACアダプタが付属している。最近はUSB Type-CからUSB PDで充電するものが多い中、やはり本機は安いだけあって専用ACアダプタになる……のかと思いきや、USB Type-CでUSB PDによる給電も可能。手持ちの27W出力USB PD充電器を接続すると、供給電力不足という通知は出るものの、充電はされた。 そして肝心のスペックでは、メインメモリが16GB、ストレージが1TBと、ゲーミングPCとしての最低ラインもクリアできている。GPUの高性能さはもちろん、CPUはZen 4アーキテクチャの8コアで、ノートPC向けとしてはかなり強力な部類だ。今後、超ヘビーな3Dゲームを遊びたいと言わない限りは、数年は問題なく使えるのではないかと思う。 前世代のRyzen 7 7840Uを搭載した安価なノートPCは全く登場しなかったので、本機は筆者にとって待ちに待った製品であり、期待以上の価格と性能だった。何度見ても安すぎて心配なくらいの価格だが、ぜひ本稿を参考に検討していただければと思う。
PC Watch,石田 賀津男