就任1年目で、アメフト大学日本一 立命館大学・高橋健太郎監督の指導方針「パンサーズは社会の縮図」
大一番でもはつらつとプレーできる精神力を培うために
新たな取り組みとしては、チームディベロップメントコーチ(TDC)として元ラグビー日本代表で立命館ラグビー部出身の冨岡耕児さん(44)に合流してもらって、いろいろミーティングをやってもらいました。最初はそこに僕も入ってたんですけども、ここは任せた方がいいと思って、途中からもう冨岡さんに託しました。そのリーダーミーティングでコミュニケーションが非常に活性化されていって、チームのコミュニケーションの質も量も変わっていったのが非常に大きかったと考えています。 ほかにも「ええな」と思ったことはどんどんやっていきました。練習中にスピーカーを持ち込んで音楽を流したりとか、「フィジカルタッチ」も始めました、練習があまりにも淡々と進んで、そのまま終わってたんですよ(笑)。なんか気持ち悪くて、僕らのころは筋トレのときなんか「ナイス!!」なんて言いながら手を合わせたりしてたんです。僕と冨岡さんとの会話の中で、どうもコロナでやらなくなったというのが分かって、名前をつけて始めてみようとなって「フィジカルタッチ」に決まったんです(笑)。ある日の練習前に「今日からフィジカルタッチやるから」って。あれも結局、自己開示につながってるんちゃうかなって思ってます。 あと、これは関西電力でダイバーシティに取り組んでいるころの学びだったんですけど、やっぱり考えないと意見は発信できない。だから違いを引き出そうと思った時には、質問をしてその人の意見を引き出さないと、その人の違いを生かせないと学んだことがあって。学生たちに考えさせる癖をつけたくて「お前ら考えろ」って最初は言ってたんですけど、それだけでは考えないんですよ。それで、練習後に部員からランダムに3人指名して、当てられた人は練習のフィードバックを何らか言わなきゃいけないっていう風にして。最初はみんなタジタジやったんですけど、半年ぐらいやるとみんな立派にしゃべるんですよね。そうなっていくと、考える癖もついてきてるのかなと思ったりしていました。 春の練習の中で、「走りもの」はめちゃくちゃしんどかったと思います。ストレングスコーチの鳥居義史さんに「日本のアメフト界で一番しんどい練習をしてください」っていうオーダーを出してました。「選手がヘロヘロになったら、僕がチアアップしますんで」と。曲を流したり一緒にグラウンドに出て声を出して盛り上げたりしてたんですけど、負けん気の強いメンバーが多かったんで、しっかりついてきてくれたと思います。1年前に比べて劇的にしんどくなったって選手たちはみんな言ってました。 しんどい練習をやらせたのには理由があります。2023年秋の関学戦(10-31で完敗)は、立命館の選手たちはいいものを持ってたし、コーチのプレーコールも悪くなかったのに、選手たちが気負いから120%の力を出そうとして、結局70%ぐらいしか実力が出せなくて負けたように僕には見えた。 僕は「ここまでやりきった」というものがないと精神力って鍛えられないかなと思ってて、荒療治じゃないですけど「俺はあんだけしんどい練習をやりきったし、これで負けたらしゃあない」と思えるような状況を作りだそうと思ってしんどい練習を課しました。 関学戦前のメンタリティーは去年と今年とでは大きな差があったと個人的には思いましたし、見てる方々にもそれは感じてもらえたんじゃないかと思います。去年の展開は別に(エースRBの山嵜)大央や(QBの竹田)剛を責めるつもりは全然ないですけど、最初にターンオーバーをされると、試合の組み立て方がめちゃくちゃ難しくなると思うので。逆に関学は何でもあり状態になって、ゲームマネジメント上でのメンタリティーの差がすごくあったと思います。去年の関学戦序盤のようなミスを出さないために、はつらつとプレーできる精神力を作っておきたかったんです。