就任1年目で、アメフト大学日本一 立命館大学・高橋健太郎監督の指導方針「パンサーズは社会の縮図」
キャプテンは「俺ら監督3人目やねん」と言った
ただ思いの外よかったなと思うのは、4回生の感受性が結構豊かで、彼らの変化がすごく早かったんです。彼らがまたそれを伝播(でんぱ)していってくれたっていうのが大きかった。いまだに覚えてるんですけど、キャプテンの山嵜大央(だいち、4年、大産大附)がポロッと全体のハドルで言ってたんですよ。「俺ら4回生はな、監督3人目やねん」って。「そうやな」と思って。彼らは純粋に立命館でアメフトやりたいと思ってやってるのに、僕は3人目の監督として来てる。僕自身は3人目であることは意識もしてなかったんですけど、彼らにとってはそうやねんなと思って。大人にもてあそばれてるように感じても、おかしくないところはあったんかなと。 それでも今年のコーチ陣を信じてぶつかってきてくれたというか、彼らの器の大きさっていうのも、僕がチームに溶け込むにあたってはすごく大きな要素だったんじゃないかなって思います。2年、3年かかると感じたのが前倒し、前倒しで進んでいけました。ただ、彼らのポテンシャルはもっともっと高いところにあると思いますし、僕はこれで満足はしていないので、4回生が残してくれたものを次の世代が紡いでいけるようにしていきたいと思ってます。 彼らの提案で始めたことで言うと、練習中の声出しですね。最初は関学の声出しええなあって言って、「ウィアーハー」「オイオイオイ」って誰かがマネし始めたんですよ。でも「さすがにそれはちゃうやろ」「俺らの掛け声作ろうぜ」となって、みんなで作り始めたんです。なんか「ワッショイ」って言ったり、いろんなバリエーションでやってます。アイツらが考えて自発的に楽しんでやるようになっていってるところも、アイデアとかそんなのも、それを行動に移しちゃうところも、いまとなっては僕らの代に結構似てるなと思ったりもしますね。 思えば最初の3カ月はどう彼らに入りこんでいくか、リードしていくかというのにかなり悩みながらやってたところがあるんですけど、4回生が腹をくくって「健太郎さんについていこ」みたいになってくれたタイミングがどこかにあると思うんです。そのあたりで僕も指導者として自信を持ってできるようになったかなと思います。 最初から、就任1年目だからっていう理由で負けるのは絶対にありえへんぐらいの戦力がそろってるとは思ってました。まあ、ものすごくプレッシャーを感じてましたね。ここからどう彼らのポテンシャルを引き出すか、彼らのポテンシャルをどう一枚岩にして団結力を高めていくか、というところをすごく意識してました。ともすれば「2回も監督代えやがって、大人は」みたいなところで反発してもおかしくないところを彼らがグッと入ってきてくれたし、僕も諦めずに入り続けたところでガブッってかみ合った瞬間があって、そこから一気にチームとしての前進が加速していったかなと思います。