【そんあことある?】18年前にイタリアで盗まれたフェラーリF50がアメリカで見つかった!果たして所有権は誰に帰するのか?
話を盗難に戻そう。この段階で盗まれた元オーナーは、当時の購入価格の何倍もの価値があるフェラーリを取り戻すことになるはずだ。元の書類も残っているし、保険会社からの補償も受けていないし、「F50」が手元に戻るのは当たり前のことと思われた。一件落着?さにあらず。そう簡単にはいかなかった。2019年末に、米国当局が「F50」を押収したとき、その「F50」はすでに新しい所有者のものとなっていたからだ。マイアミにある「アイコニックコレクション」のオーナーである、「F50」のニューオーナーは、その直前にオンラインで、その「F50」を143万5,000ドル(約2億1千万円)で購入していたが、その時点ではどうやら盗難品であることを知らなかったようだ。
200万ユーロ(約2億6千万円)のフェラーリはいったい誰のものなのか?
さらに問題を複雑にしているのは、この「F50」が2003年から2019年の間に、世界中で何度も売買され、複数の人の手に渡っていたという事実だ。一時は日本にあったとさえも言われている。元所有者のプロヴェンツィによれば、ある日、日本から電話があり、男性が2003年の盗難届けを撤回するように促したという。なんとも怪しげな話だ。
いずれにしても、1年半ほど押収保管されていた「F50」の所有者は現在2人いることになる。最終的に「F50」を手にする権利があるのはいったい誰なのか。今日まで補償を受けていない元イタリア人の所有者か?それとも、今回、143万5,000ドル(約2億1千万円)で「F50」を購入した新しいアメリカ人の所有者だろうか?最終的な判断は、ニューヨークの裁判所が下すことになるが、どういう結論が下されるか、非常に気になるところだ。
なんともまあ今回の事件は不可解な、そして釈然としない話だと思われるかもしれないが、実は美術品の世界では、こういう例が昔から絶えないし、絵画や彫塑の世界ではここに贋作という要件も含まれてくるから、より一層混沌とした状況なのが、なかば普通の世界となっている。そういう意味では、フェラーリも美術品の一部ととらえられているからこそ、の事件なわけではあるが、なにしろモノが大きい(つまり隠して密輸とかしにくい)のが難点?であるし、ばれやすく今回のような話に発展するわけである。個人的には元のオーナーに車が戻るか保険料が払われるか(なぜ払われないのかという部分も、実は怪しいのであるが)、というのが妥当な解決だとは思うが、そんなに簡単に進むとも思えず、波瀾万丈な展開となることは必須の様相だ。 2021年4月 autobild.jp掲載
Jan Götze/大林晃平