映画『違国日記』主演・新垣結衣「私はコミュニケーションが上手じゃなくて、いつもぎこちない」
ダヴィンチ読者が選ぶ「BOOK OF THE YEAR 2023 コミック」第1位、宝島社「このマンガがすごい!2024」オンナ編第5位を受賞するなど、累計販売数180万部を突破した人気女性コミック、ヤマシタトモコ原作の漫画『違国日記』が映画化。人見知りな小説家・高代槙生を演じた新垣結衣さんに、他者とコミュニケーションをとるうえで大切にしていることを伺いました。 新垣結衣さんインタビューフォトギャラリー 映画『違国日記』STORY 小説家の高代槙生(こうだいまきお)と、その姪・田汲朝(たくみあさ)の女同士の同居生活を描いたヒューマンドラマ。交通事故で両親を亡くし、親族たちにたらい回しにされる朝。その様子を見た槙生が、勢いで朝を引き取ることに。しかし槙生は他人と住むことに戸惑いを隠せず、朝は困惑する――。理解し合えない思いを抱えながら、まっすぐに向き合い、次第にかけがえのない関係となっていく姿が描かれる。
■「わかり合えない」他人との暮らしのなかに流れる温かい時間 ――主人公の高代槙生は35歳。新垣さんと同じ年齢です。槙生に共感を覚えた部分はありましたか。 新垣さん:槙生はキャラクター紹介とかで「人見知り」とひと言で表現されることも多いですよね。私自身、初めて会った人といきなり打ち解けることができないので、槙生とはそこが共通しているかもしれません。友人との時間も楽しみながら、一人の時間を大切にしているところも。 槙生はきっと、人と関わっていくなかでどうしても自分を消耗してしまう部分があって、自分や相手を守るためにも、一人の時間が必要な人なのかなと解釈しているのですが、私自身もそういう感覚があります。そして、「他人とすべてをわかり合うことは難しい」というのも、昔から漠然と考えていたことでもありました。 原作は、友人に「読んでみて」とすすめられたことがきっかけで出合い、とても好きな作品だったので、オファーをいただいたときはうれしかったのですが、そのぶん「私でいいのかな」とプレッシャーも感じました。 この物語にはさまざまなキャラクターが登場しますが、大人も子どもも、いつもハッピーな人間なんていない。それぞれが傷や問題を抱えています。そこがリアルですし、この作品の大きな魅力でもありますよね。会話ややりとりのなかで、「人は完璧ではない」ということや、わかり合えなくても寄り添うことはできるし、だからこそ日常に温かい時間が流れることがあると改めて教えてくれるので、救われる気持ちになります。 ■みんなにとって居心地のよい現場が理想だから、ちょっとふざけてみる ――他者は理解できない存在であるけれども、リスペクトしてそれを超えていくことも『違国日記』のテーマのひとつに感じます。新垣さんが人とコミュニケーションをとるうえで大切にされていることはありますか。 新垣さん:私はコミュニケーションがあまり上手ではなくて、「私と話しても楽しんでもらえないんじゃないか」「失礼なことをしてしまっていないかな」と考えてしまうタイプなんです。それで不安になったり、緊張してしまったりして、ますますぎこちなくなってしまいます。コミュニケーションがうまくいく方法があれば、逆に教えてもらいたいくらいです(笑)。 ただそのままだと、まわりの人にも気を遣わせてしまうので、自分を楽しませるためにも、特に現場ではちょっとだけふざけるように心がけています。そうすることによって、私の肩の力も抜けますし、まわりのキャストさんやスタッフさんたちにも安心してもらえると思うので。ふざけるといっても、持ちネタやギャグがあるわけではないんですが、「少し緊張してしまっているけれど、この現場を楽しみたい」という気持ちが伝わってコミュニケーションのきっかけにもなることもあるので、自分からふざけるように意識しています。 今回『違国日記』の現場では姪の田汲朝役を演じた、憩ちゃん(早瀬憩)とは二人きりのシーンが多かったので、早い段階から「私たちにとってのほどよい距離感」ができてうれしかったです。 待機する場所で二人横に並んで、たわいもない話をするときもあれば、一緒におやつを食べたり、それぞれが別のことをやっているときもあって、居心地のよいコミュニケーションがとれていたんじゃないかなと。仕事以外のコミュニケーションでも、「せっかく出会えたのだから、相手に不快になってほしくない」というのはずっと意識していますね。 ▶インタビュー後編:新垣結衣「パブリックイメージも自分の一部と思えるようになった」へ続く