<日本の農業に足りない視点>ラオスで韓国産の農産物が並ぶ理由、輸出振興へ日本が取るべき戦略とは?
2月に久しぶりにラオスを訪問して驚いたのは、韓国人旅行者が多いことだ。韓国の港湾都市である仁川(インチョン)とラオスの首都・ビエンチャンの直行便もあることから、韓国人の団体客も多いという。 観光客を中心とした人の行き来が多いためか、ショッピングモールでは、K-POPが流れ、スーパーマーケットには韓国産農産物が目立つ。まさに文化から食品までラオスに韓国が浸透している状況と言える。 これは、農産物という単体ではない多方面から国の認知度を上げる戦略が奏功したものだ。ラオスのような発展途上国でも先手を打つ韓国の現状を見たうえで、日本の輸出戦略について考察してみたい。
街のいたるところに見える「韓国」
ビエンチャンにあるワットタイ国際空港に降り立つと、すぐに韓国からの団体観光客と一緒になった。韓国の人気テレビでラオスが紹介されてから、観光客が急増しているそうだ。 空港内には、ハングル語表記の看板も多い。韓国人向けサービスの需要が高いことの表れである。 街を歩くと、今まで東南アジアで見慣れた日本語の看板ではなくハングル語の看板が目立った。また、現地の若者が韓国に影響を受けた服装をしていた。商業施設や飲食店に入ると、流れているのはラオスの流行歌よりもK-POP。韓国がラオスの生活や文化の一部となっているようだ。 スーパーマーケットへ行くと、韓国産のシャインマスカットやイチゴが並ぶ。まさにオール韓国でラオスに進出するなかで、農産物輸出が位置付けられているようだ。
ラオスはどんな国か?
外務省およびJICAホームページによると、面積は24万平方キロメートルで、日本の本州と同じくらいのところに、人口744.3万人(2022年)が暮らしている。民族はラオ族(全人口の約半数以上)を含む計50民族で、言語はラオス語である。 一人当たり国内総生産(GDP)は、2022ドル(22年)と日本円で30万円ほどである。国際連合食糧農業機関(FAO)が運営する食料・農林水産業関連のオンライン統計データベース「FAOSTAT」によると、15年の経済活動人口377万人における農業従事者は279万人であり、76%を占めている。労働人口から見ると農業が中心の国と言える。 在留邦人数は、578人(23年10月現在)と、タイが約7万人と言われているのに比べると極めて少数である。街中に日本語表記の看板などが見当たらないのは、こうした状況が影響しているのだろう。 食料の流通環境を見ると、筆者が訪問した市場は民間が経営していた。日本のように公営の市場が発達していないという。この市場は、中間業者も買い付けにきており、ラオスの個人や企業などはこのような場所で食料品を購入しているそうだ。