<日本の農業に足りない視点>ラオスで韓国産の農産物が並ぶ理由、輸出振興へ日本が取るべき戦略とは?
ショッピングモールで見えたラオスの姿
データから見ると途上国の印象が残るラオスだが、近年、ビエンチャンの中心地に日本のイオンなどを思い起こさせるような近代的なショッピングモールが出来ている。 その代表的な存在がビエンチャンセンターとパークソン・ラオスであり、互いが隣接している。ビエンチャンの街の中で目を引き、人々が集まる場所のようだ。 それぞれの中には、富裕層や外国人向けのスーパーマーケットも入っている。生鮮食料品も含め、品ぞろえは豊富だ。 こうした〝街の中心地〟にも韓国の存在が見え隠れする。ビエンチャンセンターの中にはテコンドー教室がある。テコンドーは韓国の国技。韓国文化がラオスに浸透しているのが伺える。
また、ショッピングモール内で、アイスクリームメーカーのイベントも開催されていたが、女性スタッフと思われるファッションもどことなく韓国風である。 ショッピングモール内に入居しているスーパーマーケットの食品売り場をのぞくと、輸入品が多いのに気がつく。お菓子などの加工品の日本産は多いものの、生鮮品は日本産を見かけなかった。果物については、韓国や中国から輸入されているものが多い印象だ。 韓国産イチゴは1パック1700~2500円、シャインマスカットは2000~3000円。前述の一人当たりGDPが約30万円であることを考えると、一般国民には高価なはずだ。このような果物のターゲット層はラオスの富裕層か外国人と言えるだろう。 これらのショッピングモールを訪問している韓国人団体客を見かけたし、マッサージ店に中高年の韓国人がこぞって入店していくのも見た。
日本のポップカルチャーと農産品の連携を
ラオスを訪問して、とにかく、韓国の進出が農業分野に関わらず行われており、驚きであった。ラオス人の官僚や民間の人たちからも頻繁に「韓国」という言葉が出てくる。 20代の人から「日本のアニメや音楽が好きなのは、ひと時代前の20歳代の世代で、10代はK-POPなど韓国の文化が好き」と言われた。 韓国は、官民挙げて、観光、音楽、スマホ、電気自動車(EV)など全産業の企業等がラオスに進出している。韓国の認知度が上がり、訪問する韓国人が多ければ、韓国人を対象にしたスーパーマーケットが成り立つのも頷ける。 日本では、輸出は農林水産省を中心に進めており、農産物だけの輸出に完結しがちである。ラオスでは、シンガポールやタイと違って、日本からの観光客も少なく、日本食レストランもあまり見かけなかった。まだまだ「日本」は認知されていない存在だ。 ラオスはこれからの市場であるが、「将来性のある国や地域こそ日本農産物の有力な輸出市場」と考えた場合、韓国の手法は大いに参考になる。食の業界に限らず、さまざまな分野で輸出国とパイプを持ち、日本に親しんでもらうことは推進すべきであろう。そのためにはオンラインなどに頼らず、対面の人的交流がかかせない。 日本はアニメなどのポップカルチャーが強いため、農業界とこのような分野との連携は生かしていくべきだ。ラオスで日本人や日本文化を身近に感じてもらい、ラオスの若い世代に日本食を食べたいと思ってもらえれば、今後成長が見込まれるラオスが、日本の農産物の輸出先になっていくのではないだろうか。
福田浩一