新興国に埋もれた才能と先進国を結ぶ、アフリカ発のユニコーン「Andela」が描く未来
アフリカやラテンアメリカなどの新興国のソフトウェア開発者と先進国の企業をつなぐスタートアップ企業のAndela(アンデラ)は、2014年の創業から6年後に急成長の時期を迎えた。新型コロナウイルスの影響で、企業はフルリモートでの運営を余儀なくされ、価格競争力のある契約労働者の需要は急上昇した。 ジェレミー・ジョンソンが共同創業したアンデラは当初、テクノロジー人材を育成して派遣するアクセラレーター企業として急成長した。ナイジェリアで設立され、現在はニューヨークに本社を置く同社は、2021年9月にソフトバンク・ビジョン・ファンド2が主導したシリーズEラウンドで2億ドル(約287億円)を調達し、評価額が15億ドル(約2180億円)に達しユニコーン企業となっていた。 しかし、その後のコロナ禍の収束でオフィスが再開し、金利の引き上げがテック業界への資金の流れを止めるとリモート人材の需要は、一気に冷え込み、同社の成長は急減速した。アンデラの売上高は、2019年にフォーブスの『ネクスト・ビリオンダラー・スタートアップ』に選ばれた当時に推定5000万ドル(約71億円)とされたが、現状の年間経常収益(ARR)は1億ドル(約143億円)をわずかに超える程度で、5年間で約2倍になったに過ぎない。 それでも2年間の再編を経た現在、アンデラの未来は少し明るく見える。生成AIのブームとフレキシブルな人材への需要に後押しされた同社の売上高は前年度から15%増加しており、ジョンソンは会社の未来を楽観視している。「私たちはまだグローバル企業になるための道の途中に居る」と彼は語った。 ジョンソンが会社の次の成長を見据え、新たにCEOとして迎え入れたのが、最近まで長年ウーバーのグローバル部門を率いていたキャロル・チャンだ。 ウーバーに在籍中の彼女は、コロナ禍で他の仕事に就いていたドライバーたちをプラットフォームに戻すためのオペレーションを率いていた。ウーバーの決算報告書によると、5月にチャンが退職する際にウーバーのドライバーの数は前年の570万人から25%の増の710万人に膨らみ、2021年の350万人の約2倍になったとされている。 ■15万人に及ぶ人材プール チャンは今、ゴールドマン・サックスやバイアコムCBS、クラウドフレアなどの大手を顧客とするアンデラで同様のプロセスを開始しようとしている。アンデラのリモート人材の約60%は、アフリカとラテンアメリカを拠点としているが、全体で15万人に及ぶ人材プールは135カ国に広がっている。 ジョンソンと他の5人によって設立されたアンデラは、元々は人材育成および直接人材提供者の位置づけの企業だった。同社は、ケニアやナイジェリアのハブで住宅やその他の費用を負担して若手開発者をトレーニングし、その後、彼らを米国の企業に複数年契約で派遣し、収益の約3分の1を彼らに支払い、残りを自社の収益としていた。 アンデラは、この事業モデルで2000万ドル(約28億円)以上の収益をあげ、数千人を派遣したとジョンソンは述べた。しかし、ブートキャンプやFiverr、Upworkのような人材マーケットプレイスとの競争が激化する中で成長の壁にぶつかった。その後、2019年にアンデラは独自のトレーニングプログラムの運営から離れ、数百人の若手開発者との関係を断ち切ったとニュースサイトのQuartzはその頃報じていた。しかし、その後のコロナ禍で、同社のビジネスは再び活気づいた。