なぜ侍ジャパンは米国戦逆転サヨナラ勝利で4強進出を決めることができたのか…「投手層の厚みと日本得意の小技」
甲斐は、試合後のインタビューでまず10回表に登板した栗林を称賛した。 「栗林がゼロに抑えたことが、勝ちにつながったと思います。初球からしっかりと自分の球を投げ込んできた。本当にナイスピッチングでした」 タイブレークは米国の攻撃から始まった。もちろん米国はクリーンナップにはバントをさせない。栗林は打者との勝負に集中できた。5番のフレイジャーをカウント1-2から投じた渾身のフォークの前に空振り三振。続くフィリアを二塁ゴロに、そして、この試合で3安打を放っているコロスバリーをレフトへのライナーに打ち取り、栗林があげた雄叫びが勝利を予感させた。 3試合で2勝1セーブと、日本の全勝利に絡んでいるルーキー右腕だけではない。栗林につなぐまでに、投手陣は千賀滉大(ソフトバンク)から山崎康晃(横浜DeNA)、大野の力投で6回以降のアメリカをわずか1安打に封じチームの反撃を待った。 また土壇場で底力を見せた。 開幕のドミニカ戦に続くあきらめない野球である。 1点差で迎えた9回。マウンドにはヤクルトのマクガフが立った。頼みの吉田正尚(オリックス)が倒れ一死となったが、5回に特大のアーチを放ち、やっと目覚めた4番の鈴木誠也(広島)が粘って四球を選ぶ。続く浅村栄斗(楽天)がしぶとく右前へ運んでつないだ。一、三塁。外野フライか内野ゴロで同点の場面で、6番の柳田が最低限の仕事を果たす。体勢を崩されながらボールを叩きつけ二塁への深いゴロで、同点の走者を生還させたのだ。延長戦はバントの小技が使え、ブルペンの充実している日本にとって有利である。稲葉監督が構築してきたチームコンセプトが勝利を呼び込んだと言っていい。 ただ「問題点が3つあった」と高代氏は指摘した。 「2回に菊池がバントを決めておけば苦労しなかっただろうし、村上も三塁のベースカバーを忘れたミスがあった。カットマンの坂本をフォローするのは、村上ではなく菊池の仕事となる。もうひとつは青柳の起用。ストライクをそろえすぎて、シーズン中のよさを出せていなかった。アメリカの打者はフライ革命の影響でアッパースイング気味なので、ストライクゾーンにくるとタイミングが合う。ゴロを打たせる青柳の持ち味を生かせなかった。開幕のドミニカ戦で打たれたときにも指摘したが、自信を失っているように見える青柳の起用はもう難しいだろう」 2回に浅村の四球と柳田の中前打で作った無死一、二塁のチャンスで、7番・菊池涼介(広島)は初球にバントを試みるもファウル。カウント1-2から強打するも、ショートゴロ併殺打に倒れてしまっていた。 3番・吉田正尚(オリックス)と柳田のタイムリーで2点を先制した直後の4回表には一死後にフレイジャーの左中間二塁打で1点を返された場面で、サードの村上宗隆(ヤクルト)がベースカバーを怠るボーンヘッドを犯す。フレイジャーが労せずに三塁へ進んだピンチから逆転を許した田中は、4回二死69球でマウンドを降りている。