東京五輪開幕戦で侍ジャパンがドミニカに9回逆転サヨナラ勝ちも金メダル獲りへ残った問題点
東京五輪の野球競技が28日にスタート、日本は福島あづま球場でドミニカ共和国と対戦し、2点ビハインドで迎えた9回に逆転サヨナラ勝ちして4-3で開幕戦を飾った。日本の先発、山本由伸(オリックス)とドミニカ先発のメルセデス(巨人)が、互いに譲らぬ力投を見せて0-0の緊迫した試合になったが、2番手の青柳晃洋(阪神)が7回に先につかまり苦しい展開になった。2点を追う9回。相手のミスにも助けられ甲斐拓也(ソフトバンク)のセーフティスクイズで同点に追いつくと最後は一死満塁から坂本勇人(巨人)がセンターオーバーのサヨナラ打を放った。日本は31日にメキシコと対戦する。
甲斐のセーフティスクイズで同点を演出
無観客の福島あづま球場を包むセミの声をサムライたちの咆哮がかき消した。2点を追う9回の逆転サヨナラ劇。 最後は坂本(巨人)だった。 「初球を打つかどうか迷った。でもここで受け身になると苦しくなると思って初球からいった」 WBC、プレミア12と国際経験豊かな坂本が弾き出した答えが、ドミニカの代わったばかりのマリニエスの初球狙い。思い切り叩いた打球は、センターの頭上を抜けていった。劇的サヨナラ勝利に全選手がベンチを飛び出した。 五輪の開幕戦には魔物が棲んでいた。 9つの三振を奪い、ドミニカ打線をわずか2安打、無失点に抑えていた好投の山本を稲葉監督は6回までで降ろした。 「88球で(ドミニカ打線が)3周り目に入って球数からいくと、ああいうところで、とらえられる試合がよくある。いいピッチャーが後ろにどんどんいるので、スパっと替えて、そういうピッチャーに託す」 ちなみに五輪には球数制限はない。展開からするともう1イニング続投だったのだろうが、その采配は裏目に出た。 7回からマウンドを任された青柳(阪神)にコントロールもキレもなかった。明らかなボールでは、ドミニカ打線も手を出してくれず、二死一、二塁から8番打者のバレリオに左中間を破られ2点を先制され、四球を与えたところでマウンドを降りた。 その裏、浅村(楽天)、柳田(ソフトバンク)の連打で作った一死二、三塁のチャンスに8番の村上(ヤクルト)が内野ゴロで1点を返したが、9回は、カーブの守護神、栗林の調子も、もうひとつでリズムをつかむのに時間がかかり、また1失点。ドミニカの怠慢走塁で1点に留まったのは幸いだったが、ついに2点のビハインドで最後の攻撃を迎えていたのである。 だが、稲葉監督は「誰一人あきらめている選手はいなかった。どんどんいい雰囲気になっていった」と、ベンチの様子を振り返る。 一死から柳田は、一塁ゴロに打ち取られたが、投手がベースカバーを忘れるミスでラッキーな出塁。この日、2三振の菊池(広島)に代わる代打、近藤(日ハム)が一、二塁間を破った。そして村上が崩されながらもライト前へタイムリーを弾き返して1点差に迫る。 実は、このときドミニカに中継ミスがあり近藤は三塁へ進んだ。一死一、三塁の同点、あるいは、一気にサヨナラさえ狙える場面で稲葉監督は、甲斐をそのまま打席に立たせた。 その初球に甲斐はスクイズの構え。そしてバントを空振りした。代走の三塁走者、西武の源田はスタートを切っていなかった。 「偽装スクイズ」だったという。 ドミニカ守備陣はもう混乱していた。続く2球目に甲斐はまたしてもスクイズを前進守備を取っていなかった一塁側へ転がした。セーフティスクイズがズバリ成功。日本野球の強みとも言える小技が土壇場でドミニカのパワー野球の足元をすくった。 WBCに2度コーチとして出場し、三塁コーチを務めるなど国際経験のある元阪神コーチの高代延博氏は、この場面をこう評価した。