一般道でフェラーリの限界走行をしてみたい! 無茶な注文の主とは?
自動車ジャーナリストのレジェンド岡崎宏司氏が綴る、人気エッセイ。日本のモータリゼーションの黎明期から、現在まで縦横無尽に語り尽くします。 岡崎宏司の「クルマ備忘録」 モータージャーナリストとして雑誌社から海外のクルマのテスト走行を頼まれるのは日常的なこと。しかしフェラーリのテストを頼んできたのはメディアではなく、しかも一般道での限界走行をしたいと。奇想天外な依頼の顛末とは?
フェラーリ308の熱い思い出!!
フェラーリには当然多くの思い出がある。そんな中でも、もっとも貴重な、あるいは奇想天外⁉ なものは、1984年頃に乗った308での思い出だ。 308には何度も乗っているので、308自体のあれが面白かったとか、これが凄かったとかいった類の話ではない。 ではなにが貴重で奇想天外だったのか。 まずは、テストの依頼者が雑誌社ではなく自動車メーカーだったこと。それがフェラーリからの依頼なら、ただ「光栄に思う」だけだが、日本のメーカーだったから驚いた。
そのメーカーとは、開発関係やマーケティング、ブランディング等々、、いろいろな仕事をしていたし、役員にもエンジニアにも、親しい人が多くいたメーカーでもある。 参考車として、他社の、海外メーカーのクルマをテストするのは日常的なことで、珍しくもない。だが、この時のテストは「異例づくめ‼」だった。 海外メーカーの参考車は、自社のクルマのライバルになる、あるいは前進するための教科書になる類のクルマが選ばれるのがふつう。 なので、日本のメーカーの場合は、そのほとんどがドイツ車の量販系モデルで占められた。ブランドは、VW、アウディ、BMW、メルセデス ベンツが圧倒的に多かった。 そんなことだから、例えば、フェラーリとかランボルギーニとかが、テスト車/参考車として用意されることはまずない。 ただし、「ポルシェだけは例外」。プレミアム系ブランドを持ち、その中に欧州のハイパフォーマンス勢に割って入ろうといったモデルを加えようとした場合、参考車にポルシェが組み入れられるのは珍しくない。