一般道でフェラーリの限界走行をしてみたい! 無茶な注文の主とは?
なので、僕にとって、日本のメーカーのテストコースでポルシェを走らせることは、非日常的なことではなかった。 加えて、ポルシェを全開で走らせられる機会を多く持てたことは、僕に多くの貴重な経験をもたらしてくれた。 話を元に戻そう。フェラーリ 308のテストを依頼してきた書面には、実験部長の署名が入っていた。特殊なケースを除くふつうの単発テストでは、基本、口頭での依頼であり、主担や課長との電話での簡単なやり取りだけ。つまり、書面での依頼はない。最近はメールでのやり取りがほとんどだが、、。 テスト車が異例のフェラーリ 308で、形式ばった依頼書が届いた、、、となると、当然、「いったい、なんなんだろう!?」と思わざるを得ない。でも、理由は聞かずに、依頼を受ける旨の書面を送り返した。 それから数日後、「堅苦しいお願いの仕方で戸惑ったかもしれませんが、実は、、」との説明の電話が入った。
で、その話の内容とは、「実は、うちの部長から、一度フェラーリに乗ってみたい。それも、一般路で岡崎さんの横に乗りたい」との希望が出て、なんとなく堅苦しいお願いの仕方になってしまった、、とのことだった。 「そうだったんですか! いつもと違う雰囲気だったので、首を傾げていたのですが、了解です。でも、部長だって親しい間柄なのに、、緊張しちゃいましたよ!」と僕は笑いながら返した。 「ええ、そうですよね 。でも、部長は剛気そうに見えますが、実はけっこう神経質なところもありまして、、一般道でフェラーリの横乗りを岡崎さんにお願いすることに、とても恐縮してしまっているんです」。 これで、書面での依頼という疑問は解決したわけだが、同時に部長が緊張していることがわかり、僕もなんとなく緊張度が押し上げられてしまった。 同時に、フェラーリに乗りたい、一般道で乗りたい、さらには社外の人間である僕に運転してほしい、、という依頼に、実験部長のただならぬ思いをも感じさせられた。