橋本ロマンスによる『饗宴/SYMPOSION』が世田谷パブリックシアターで7月7日まで上演
東京・三軒茶屋の世田谷パブリックシアターで、演出家・振付家の橋本ロマンスによる新作パフォーマンス公演『饗宴 / SYMPOSION』が7月7日まで上演中だ。 橋本は、幼少より舞台に親しみ、現代美術を学んだのちに大学では身体表現芸術を専攻。パフォーマー / 演出・振付家としての活動を本格化させた。その鋭い感性から生み出される作品が高く評価され、SICF20 PLAY部門グランプリ(2019)、横浜ダンスコレクション2020 最優秀賞新人振付家賞(2020)、第16回日本ダンスフォーラム賞(2021)などを立て続けに受賞。朝日新聞年間ベスト舞踊作品(2021)、月刊ダンスマガジン「もっとも印象に残っているコリオグラファー」(2021)にも選出された。また、コロナ禍の社会に「ファウスト」「死の舞踏」のイメージを照らした『デビルダンス』(2021)や、東京に生きる若者の焦燥感を映し出す『Pan』(2021、23)など、革新的な視点で現代社会をとらえた作品を精力的に発表している。 本作は、古代ギリシャの哲学者・プラトンの対話編『饗宴』への批判的な視点を出発点として手がけられたもの。『饗宴』では、詩人、知識人たちによる「愛(エロス)」についての演説、ソクラテスの「智慧(ソフィア)」への賛美が語られている。その『饗宴』が、2024年の東京で開かれるとしたら、そこに集まる人々とは誰か。そこではどのような「愛」や「智慧」が語られるのか。現代における「マイノリティ・ポリティクス」に焦点を当て、社会で透明化された人々のための愛のメッセージを、身体表現で可視化するものとなる。 開幕に合わせて、橋本は次のようにコメントしている。 私が望むことは、このような作品を作る必要が無い世界です。何十年も前のアーティストが訴えていた願いを、いまだに引き継ぐ必要の無い世界です。この怒りが諦めに変わる前に、私は評価の代わりに、変化を望みます。どうかこの作品がフィクションの蓋で閉じられないことを、そして、どこかで新たなノイズを生むものになることを願います。 橋本ロマンス (プレスリリースより抜粋) また、本公演の音楽を担うのは、電子音楽家・作曲家で、国内各地でツアーを行うなど活躍の幅を広げているバンド・yahyelのメンバーである篠田ミルだ。篠田は次のようにコメントをしている。 この作品に居合わせられたことを心から幸運に思う日々です。 作品を準備する中での、演者やスタッフ間でのコミュニケーションのプロセス自体がこの作品の決定的な部分であると強く確信しています。 どうかこの作品に巻き込まれに来て欲しいです。 お会いできるのを楽しみにしています。 篠田ミル (プレスリリースより抜粋) 出演者には、池貝峻、今村春陽、唐沢絵美里、Chikako Takemoto、田中真夏、野坂弘、湯浅永麻といった様々なフィールドで活躍するアーティストが参画している。 ほかにも、本公演をつくりあげるにあたり、最大限のリサイクル素材を活用した舞台美術や劇場によるハラスメント防止講習、ジェンダープロナウン表記など、新しい舞台のあり方を参加者全員で試行錯誤しているという。いまだからこそ見るべき舞台とは何か。その現在地点を劇場で目の当たりにしてほしい。