生成AIは創作の現場でどう使われている? 「制作コストゼロ」は実現するか
生成AIが創作の場に広く進出している。文章やイラストは言うに及ばず、漫画や音楽や動画の生成まで可能となり、そのノウハウ指南自体がまた別のビジネスをも生んでいる。そこで、あまりにも素朴な疑問をあえて投げてみたい。生成AIはクリエイターの仕事を奪うのだろうか? このような状況に、当事者たる作り手はどう対峙し、どんな手触りを感じ、どんな見通しを立てているのだろうか? 【詳細な図や写真】小沢氏は商業漫画でも生成AIの使用を公言している(出典:小沢高広「漫画制作における生成AI活用の現状:2024春」)
ラッダイト運動の現代版?
19世紀初頭にイギリスで発生したラッダイト運動(機械打ちこわし運動)は、産業革命による機械の導入・生産の効率化によって、賃金も地位も低下した技能職である労働者階級による反発だったが、2023年のハリウッドで起きた脚本家ストは、まさしくそれの2020年代版だった。 ハリウッドの脚本家と俳優のストライキが終結 ―AIの利用制限などに合意 https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2023/11/usa_02.html それでなくとも、「安価な電卓が普及したことで暗算に長けた者の地位が下がった」「火器が普及したことで刀の使い手が戦争で不要になった」の類いは──いずれもかなり単純化した例えではあるが──人類進化のあらゆる過程で発生している。 今回は、『東京トイボックス』『南緯六〇度線の約束』などで知られる漫画家ユニット・うめの企画・シナリオ・演出担当である小沢高広氏と、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』ほかアニメ・特撮分野の脚本を多く手掛ける脚本家の小林雄次氏に、さまざまな疑問をぶつけてみた。第1回である今回は、両氏の領域において生成AIは何に使えて、何に使えないのかを聞いた。 なお、生成AIは進化のスピードが非常に速く、どのような進化を遂げるのかの見通しもつきづらい。よって、ふたりへの取材日と記事の執筆時期が【2024年10月】であることを記しておく。生成AIの状況や彼らの認識はこの時点のものであることをご了解いただきたい。