実質500万円 燃料電池車「ミライ」 購入を検討してみるなら?
トヨタが2014年12月15日に発売した燃料電池車の『ミライ』。数年前は1台1億円ともいわれていた燃料電池車ですが、発表されたメーカー希望小売価格は723万6000円(税込)。しかも、今ならエコカー減税や最大約202万円の補助金が使えるので、実質およそ225万円は負担が軽減されて、500万円程度で買えてしまいます。 【写真】トヨタ「MIRAI」発売 燃料電池車が抱える課題とは? とはいえ、11月18日に開催された記者発表でも、前川眞基副社長が「販売普及体制は正直に言ってスタートラインに立ったところ」とか「水素ステーションが設置される周辺で、お客様へのケアがしっかりできるエリアから販売」などと発言。大きなニュースになっている一方で、一般ユーザーにとっては「本当に買えるの?」といった印象があるのも事実です。
納車待ちは「1年以上」
何はともあれ『ミライ』の販売を扱うディーラーに電話してみました。「ミライを注文したいんですけど」と話してみると、ディーラー担当者がまず口にしたのは「納車まではおそらく3年程度かかります 」という言葉。 現状『ミライ』は大量生産体制になく、工場で1台ずつ手作りに近い工程で作られているそうです。年間生産台数は約400台(国内向け)程度の見込みで、それに対して、発売より1か月前の記者発表の時点で官公庁や企業を中心にすでに200台程度の受注があり、発売日を過ぎた現在は1500台ほどの受注を抱えているとも言われています。その後、先日トヨタから来年には2000台程度に増産するといった発表もありましたが、一般ユーザーが今から普通に注文しても1年以上の納車待ちになるでしょう。 さらに、ディーラー担当者の説明によると、正式に注文をするためには「50万円から100万円の手付金をいただきます」とのことでした。最低でも50万円を支払って、1年以上待つことができる人でなければ『ミライ』をオーダーすることはできないのです。また、補助金や税金の優遇は納車時の制度が適用されるので、たとえば2年後の納車時に現在と同様の補助金が使えるとは限りません。かなりの金銭的余裕と覚悟が必要です。 水素ステーションのことも気になります。2014年6月の時点で開設が予定されている水素ステーションは約40か所。そのうちすでに稼働しているのはまだ数か所しかありません。『ミライ』が1回の満充填で走れる距離は約650キロとされていますが、実用的に安心して走れる距離が400~450キロとして、目的地との間に都合よく水素ステーションがなければ、片道200キロ程度を往復するのが精一杯ということになります。 普通の電気自動車に比べて航続距離で有利といわれる燃料電池車ですが、まだ今後の数年間はとても制約の多い自動車でしかありません。一方で、電気自動車用の急速充電スポットは急激に増えているので、現状ではむしろ一充電航続距離が100~200キロ程度の電気自動車のほうが機動力は高いともいえるのです。 トヨタ自動車の広報部に、一般ユーザーへの納車までの期間などを問い合わせましたが「現在、お答えすることはできません」との返事でした。