贅沢貧乏『おわるのをまっている』【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】
チラシとは観客が最初に目にする、その舞台への招待状のようなもの。小劇場から宝塚、2.5次元まで、幅広く演劇を見続けてきたフリーアナウンサーの中井美穂さんが気になるチラシを選び、それを生み出したアーティストやクリエイターへのインタビューを通じて、チラシと演劇との関係性を探ります。(ぴあアプリ・Web「中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界」より転載) 【中井美穂 めくるめく演劇チラシの世界】贅沢貧乏『おわるのをまっている』取材より ホテルと、靴下。印象的なイラストを据えた2種類のチラシがつくられた贅沢貧乏『おわるのをまっている』。どちらのチラシも、かわいらしくもさみしい雰囲気が漂っています。「絵の力が2パターンを作らせた」というこのチラシについて、作・演出の山田由梨さん、イラストレーターの白村玲子さん、デザイナーの渡部沙織さんにお話を聞きました。 中井 『おわるのをまっている』は、実は仮チラシの段階から気になっていて。 山田 この仮チラシは、私が作りました。仮チラシは普通、情報だけが載っているものが多いですが、頭の中が見えるような、ハンドメイド感ある雰囲気のものを作ってみたくて。脚本を書く前に、作品に関するノートを書いているんですが、そのメモを切り貼りして作ってみました。デザインのプロではないので、これでいいのかな、恥ずかしいなと思いつつ、でも劇団の公演だし、と思って。 中井 久しぶりの公演ですしね。 山田 はい。お客さんに「こんな公演にしますよ」というメッセージを手書きで、近い距離で伝えられたらなという思いもあって、こうなりました。 中井 本チラシは、山田さんが作った仮チラシを見た上で渡部さんが作成を? 山田 このチラシをお見せして、台本も読んでもらいました。 中井 イラストレーターの白村さんとデザイナーの渡部さん、おふたりとの出会いは? 山田 常に気になるイラストレーターさんをSNSで探しているんですが、今回は白村さんのイラストをInstagramで見つけて。これまで見たことのないタッチで、かわいらしさ、ユニークさ、切なさとか、いろんなものを感じられて。劇団のみんなに「今回の作品に合っているんじゃないか」と共有したうえで、面識もないのにラブレターのような長文のDMを直接お送りしました。 白村 お仕事の連絡ってドライなものも多いんです。でも、山田さんはいきなりお仕事の話ではなく「ぜひお話をさせてほしいです」というところからメッセージをくださった。演劇は詳しくなくてご連絡いただくまで贅沢貧乏は存じ上げなかったんですが、「いい人かも」と(笑)。 山田 お願いできることが決まって、白村さんに「やりやすいデザイナーさんはいますか」と聞いたら、渡部さんをご紹介してくださって。実は白村さんのInstagramの投稿からすでに渡部さんをチェックしていて、素敵だなと思っていたので前のめりでOKしました。 白村 渡部さんは大学の同級生で、私の個展のDMを作ってもらったことがあったので。 渡部 神保町で打ち合わせしているときに、白村さんから連絡が来て、その足で会いにきて依頼してくれました。私も演劇はあまり観ないのですが、劇団さんのお仕事を一度やってみたいと思っていたので、願ってもないお話でした。 中井 それはなぜですか? 渡部 演劇チラシって、自由度が高い作品が多い印象があって。学生時代から素敵だなと思っているデザイナーさんの作品を観て、憧れていたんです。