CS出場の広島にふりかかる難題
16年ぶりのAクラス、球団初のCS出場を手中に収めた広島に難問がふりかかっている。チームが勝っているがゆえにクローズアップされたのかもしれないが、前田健太、野村祐輔、バリントンと共にローテーションの一角を守り、現在9勝10敗、防御率3.52で、2年連続の2桁勝利に王手をかけている大竹寛のFA問題である。すでに国内FA権を得た大竹に横浜、中日、巨人、阪神、ロッテ、楽天など複数の球団が水面下で調査をスタートしているのだ。 [表]12年前 ”幻のAクラス”だった広島
即戦力不足のドラフト市場
「今年はドラフトで即戦力の投手が不足しています。それだけに確実に計算のできる大竹の存在は大きい。もしFA宣言を行うなら、数球団の争いになるでしょう」とは、某球団の幹部の話。広島の快進撃で注目を集めたことと同時に、即戦力投手の不作が予想されるドラフトとの相関関係が影響しているというのだ。 今オフのドラフトでは、間違いない即戦力は社会人では、JR東日本の吉田一将、大学では、九州共立大の大瀬良大地の2人くらいしかいないとされている。高校生組では、桐光学園(神奈川)の松井裕樹、瀬戸内(広島)の山岡泰輔らは1位で消えるだろうが、即戦力とは言い難い。先発のコマの足りないチームだけでなく、圧倒的な力の差で優勝した巨人でさえも、喉から手が出るほど即戦力のピッチャーは欲しいが、その補強を新しい外国人選手で考えるのはギャンブルみたいなもの。故障さえ無ければ間違いなく計算の立つ大竹の評価が、オフの移籍市場で高くなっていることにも納得がいく。
2012年にはカムバック賞を獲得
大竹は、2001年に浦和学院からドラフト1位で入団して、今年プロ12年目となる30歳。2005年からローテーションに入って2桁勝利、2008年には、黒田博樹がメジャー移籍したことから初の開幕投手に指名されたが、制球の不安定さから、なかなか貯金の作れない投手だった。2009年にチェンジアップを覚えてから脱皮。43イニング連続無失点記録を作るなど、4年ぶりに10勝して負け数も8に抑え防御率2.81の成績を残したが、翌年から肩、肘の故障に悩まされることになる。2010、2011年は、合わせて2勝。 だが、昨季は11勝でカムバック賞を獲得するなど、その懸念材料もクリアした。2012年にNHK静岡のテレビキャスター、光部杏里さんと結婚したが、所帯を持ったことによる生活環境の変化が大きい。マエケンもそうだが、奥さんの“内助の功”で、生活のリズムや、食事面の管理が行き届き、アスリートとしての体調管理が改善された。それが結果につながっている。問題は、当の大竹が、どういう決断を下すのかということだ。