日本農業の舵切り替わった──種子法廃止は民間参入促進? それとも外圧?
都道府県は「知見」の提供促される
種子法廃止に先立ち、2017年8月に施行された新たな農業競争力強化支援法では、都道府県に以下のような役割が求められました。 「民間事業者が行う技術開発や新品種の育成などの促進」 「種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供を促進」 つまり民間との連携はもちろん、これまで都道府県がつちかってきたノウハウやデータも積極的に提供するべきだというのです。 なぜ、こうした政策が出てきたのでしょうか。 堺田課長は「今までも民間企業と都道府県や独立行政法人との共同研究開発はあった。しかし、その連携は不十分で、せっかく開発した新品種もなかなか普及していない。これからは種子法の廃止で義務付けがなくなり、“自由”になった都道府県と民間との連携が加速し、多様なニーズに応える品種開発ができるだろう」と説明します。 稲、麦、大豆の品種開発に関する都道府県の予算は、種子法廃止後も従来通り地方交付税で確保。種子の品質基準は、これまで主要農作物をカバーしていなかった種苗法の中に位置付けることで担保するなどの措置で「種子の安定供給はしっかりできる」とも。 しかし、まだ不安が解消されたとは言えません。シンポジウムで「農水省の言い分は希望的観測が多い。種子法の廃止で日本の米、麦、大豆はやはり守られなくなる」と真っ向から反対論を唱えたのは、元農水大臣で弁護士の山田正彦氏です。もともと“身内”だった山田氏がなぜ反発や危機感をあらわにするのか。次回はその主張に耳を傾けてみましょう。 ---------- ■関口威人(せきぐち・たけと) 1973年、横浜市生まれ。中日新聞記者を経て2008年からフリー。環境や防災、地域経済などのテーマで雑誌やウェブに寄稿、名古屋で環境専門フリーペーパー「Risa(リサ)」の編集長も務める。本サイトでは「Newzdrive」の屋号で執筆