「文学フリマ」の盛況を支える“KDP出版”とは? リスクを抑えながら自費出版する仕組みと楽しみ
他の印刷・製本サービスもほぼ同じ要領で使える
KDP出版の使い方については、ヘルプページや、ネット上に沢山ある解説記事(筆者が書いたものもあります)を参考にしてほしいが、ここで言いたいのは、KDPで一度本を作って、PDF入稿を覚えれば、他の同人誌印刷屋さんやオンデマンド印刷を行っている印刷所など、他の印刷・製本サービスも、ほぼ同じ要領で使えるということ。むしろ、KDPのように完全に機械任せにするのではなく、人の目や手が入る分、巷の印刷サービスの方が使いやすい場合がある。 また、KDPのように、1冊から安価で作ることができるサービスは、1冊作っても100冊作っても1冊あたりのコストは変わらない。なので、文学フリマ用に2~30冊作って、売り切ってしまおうというような場合はいいのだけど、100冊、200冊作るとなると、印刷屋さんのサービスの方が安上がりだったりする。ただし、その場合、200冊分とかを前払いすることになるので、初期コストはそれなりにかかる。 また、KDP出版は、元々アメリカのサービスなので、選べる判型が日本のサイズとは微妙に違う。その微妙な違いがカッコよくて、筆者はKDPの新書サイズに近いけど、ちょっと幅が広い判型を使っている。でも、例えば文庫本を作りたいといった時、KDPには文庫サイズの選択肢がないのだ。 筆者が12月の文学フリマ用に作った「菊月千種の夕暎」という本は、文庫サイズで出したかったのと、他の印刷屋を使ってみたかったことから、京都の「ちょ古っ都製本工房」を使ってみた。こうやって、遠方の印刷屋さんが使えるのも、オンライン入稿あってのこと。 文学フリマで色んな本を買って、奥付を見ると、印刷・製本をどこで行ったかが書かれている場合がある。気に入った製本だったりすると、その印刷所を検索して、使うかどうかを検討するというのも、本作りの楽しさの一つなのだ。 デジタル入稿でも最終的には紙になるし、紙の種類、印刷の具合など、店によって違う。せっかく「モノ」としての本を作るなら、そういう部分もしっかり自分で選びたいではないか。その意味では、これは「コピー本」でいきたいとか、今回の筆者のように」「文庫で作りたい」といったわがままが通せるのも自主出版の魅力なのだ。 本の価格は、印刷コストや送料から考えればいいのだけど、今回、文学フリマを、自分のブースを友人に任せて、客としてもぐるぐる回ってみたところ、ある程度、皆さん、しっかりした価格設定をしていた。印刷代が1冊あたり300円だったとして、なら500円でいいや、ではなく、この本なら1000円出してほしい、1500円の価値があるといった値付けをするべきだと、筆者も思う。それは、儲けたいというより、「本」の値段は、そのくらいでないといけないと思うからだ。 それこそ、150ページくらいあれば、1冊10ドル、まあ1500円くらいが、自主製作本の相場になればと思っている。実際、会場を見て回っても、コピー本なら500円前後、製本されたものなら700円~1200円くらいが相場になっていると感じた。そして、その値段で、ちゃんと売れている。そこも素晴らしい。 本が出来たら、次は宣伝である。ただ、文学フリマに持っていって、ブースに並べれば売れるというなら苦労はないが、とにかく、沢山のブースが並び、沢山の本が売られているわけで、やはり事前に知ってもらうのは、とても重要。もっとも、案外、通りすがりの方が買ってくださるケースも多くて、そこも文学フリマの面白さなのだけど、それに頼っていては、せっかく作った本が見逃されてしまう。