被虐待が疑われる子どもから「誰にも言わないで」と言われたら?
こう対処しよう!
食事をとらせてもらえていない当該児童については、「あなたを守るために必要なことだから」ということを十分に説明した上で、管理職に児童から聞いたことを共有するとともに、児童相談所に通告する。
児童虐待とは
さて、今回のテーマは虐待です。多くの児童生徒と接する教員生活の中では、児童生徒が虐待を受けているかもしれないと思う場面にも直面すると思います。 児童虐待とは、児童虐待の防止等に関する法律(以下「法」といいます)第2条に①身体的虐待(第一号)、②性的虐待(第二号)、③ネグレクト(第三号)、④心理的虐待(第四号)の4種類が定められています。③の例としては、「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食」も法の中で挙げられており、漫画での「成績が悪いから食事をさせない」ということも、これに該当すると考えられます。
通告義務
法第6条では、「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない」と通告を義務付けるとともに、同条第3項では「守秘義務に関する法律の規定は、第1 項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない」と定めています。 したがって、公立学校の教員は地方公務員法第34第条1項(私立・国立学校の教員の場合は服務上)守秘義務を負いますが、虐待通告についてはその義務が解除され、むしろ通告の義務が優先されることになります。 漫画の事例では、児童本人の話しかありませんが、虐待の事実がある疑いとしては十分であり、担任としては通告義務を負うことになります。
心理的なハードル
ただ、教員自身は虐待の疑いがあると考えていても、左の漫画のように本人が「絶対に言わないでほしい」と言っているにもかかわらず通告することには、抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、本人が拒否しているとしても法律上の義務が解除されるわけではありません。そのため、本人に対しては、本人を守るために他の大人にも共有が必要なことであると十分に説明し納得を得ることを目指しつつ、どうしても本人の納得を得られない場合には、その後教員としてどのように対応するか説明した上で、通告等の対応をすることが考えられます。 また、保護者のことを「告げ口」しているような感覚を持ってしまい、通告を躊躇してしまう方もいるかもしれません。しかし、虐待の危険がある家庭は、支援を必要としている家庭でもあります。そうだとすると、通告をすることは「告げ口」ではなく、「新しく支援につなげるための情報共有」という意味になるのです。 このように「通告」のとらえ方を変えることで、心理的なハードルの回避につながるのではないでしょうか。