女子レスリング53キロ向田真優の金メダルは“愛の力”だったのか?
「日本では例がほとんどないですが、選手とコーチがパートナーという例は、海外では珍しくありません。職場恋愛、職場結婚みたいなものだと思えば、不自然なことではないと分かると思います。一つのことに真剣に向き合う、信頼できるパートナーがコーチだったとしたら、それはとても幸運だとすら思います。何より選手生活において、愚痴を言える相手がいる、というのは大きいですよ」 リオ五輪では、53キロ級3位決定戦に勝ち銅メダルを確定させたマットソン(スウェーデン)は、ウイニングランの続きで客席にいるパートナーに飛びついて喜びを分かち合っていた。日本で、76キロ級代表の皆川博恵(クリナップ)や、ロンドン五輪金メダリストの小原日登美は、既婚者として五輪に出場した。浜口京子のライバルだったノドハーゲン(カナダ)や、東京で4回目の五輪出場となった50キロ級のスタドニク(アゼルバイジャン)など、夫がコーチである選手も多い。 「すべてをかけてレスリングに打ち込む、というと美しく聞こえるかもしれませんが、人生はそんなに分かりやすくできていない。パートナーがいること、結婚したり出産することを選手でいる間は避けましょう、なんていうのはナンセンスだと思いますよ。何より、レスリングもしていたおかげで幸せになれたと選手が思えるようになってほしい」と小林氏もエールを送る。 日本でも既婚で五輪に出場した女子レスラーはいるが、子供を産んでから五輪のマットを踏んだ選手はまだいない。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に貢献すると宣言した東京五輪をきっかけに日本の女子レスラーたちの未来にも変化の波が訪れることを期待したい。