純粋なオーバーテイクは「ほぼほぼ不可能」と平川亮。デグラデーションにも優位なきトヨタ、決勝は「辛抱強く」/WEC第6戦
8月31日、WEC世界耐久選手権第6戦オースティン(サーキット・オブ・ジ・アメリカズ=COTA)の公式予選を終えたトヨタGAZOO Racing。現地時間の予選日夜、チーム代表兼7号車GR010ハイブリッド・ドライバーの小林可夢偉、8号車の平川亮が、日本メディアのリモート取材に応えた。 【写真】7号車トヨタGR010ハイブリッドの予選アタッカーを務めた小林可夢偉 ■路面改修でメリットが消滅? この日、7号車は可夢偉がアタックし、2次予選『ハイパーポール』に進出するも9番手。8号車はセバスチャン・ブエミがステアリングを握り、予選12番手と苦しい結果に終わっていた。 記者からは、COTA向けに変更されたBoP(性能調整)の影響を問う質問も出たが、「BoPに関しては(規則で禁じられているので)何も言えませんが……あの表を見て、察していただければと思いますけど」と語る平川の様子からは、少なくない影響があることも伺えた。 実際、「フリー走行で他のマニュファクチャラーと一緒に走ったのですが、ピュアに抜くのはほぼほぼ不可能な感じでした」と平川は厳しい現状も口にした。 ハイパーカークラスに参戦するほとんどのメーカーは、7月にCOTAで行われたテストに参加した。しかしその後、ターン19からターン3手前にかけての路面が再舗装された。1コーナーにあったバンプもスムーズになり、再舗装区間ではグリップの向上も感じるとのことで、「タイヤに厳しい部分が、あまりなくなっています」と平川。この点が、トヨタ陣営には相対的に不利に働いている傾向もあるようだ。 前戦ブラジルの荒れた路面ではタイヤが削られ、その部分でトヨタは他車に対してアドバンテージがあった。今回のCOTAは高温や高速コーナーでの熱ダレの影響の方が大きく、「カタールに近い」感じだと語る平川は「タイヤのタレがかなり少なそうなので、前回のブラジルのように僕らにメリットがある感じではなさそう」と決勝を展望する。ロングランでのタイヤのデグラデーションの影響が少ないことから、決勝での勢力図も「予選の順位のままな気がします」と厳しそうだ。 ただし、タイヤのデグラデーションが少ないとはいえ、皆無ではない。平川は「集団のなかで走ることになると思いますが、そのあたりもマネージして、2スティント目で差をつけられればと思います。あとはトラフィックマネジメントをクレバーにやることくらいですかね」と、控えめながら決勝に向けた希望も語っている。 なお、7月のテストでニュータイヤを履く機会があったことで、今回8号車はブエミがアタッカーを務めたという。 ■「現状では、これが僕らに出せる力」と小林可夢偉 一方、7号車でハイパーポールに進出した可夢偉も、厳しい戦況もあってか言葉数が少なかった。 「予選は9番手と12番手という厳しい結果となってしまいました。練習走行から僕らのクルマとしては、デキは悪くないのかなと思っていたのですが、周りが非常にコンペティティブなパフォーマンスで、予選が終わってみると『ちょっと厳しいな』というのがいまの状況です」と可夢偉は戦況を分析する。 「予選のアタック自体もしっかりできたと思うし、クルマのパフォーマンスは出し切れたと感じています。ただこのポジションなので、非常に悔しいし、同時にどうすればもっと上に行けたのかという部分は、しっかり課題として今後に活かしていきたいです。僅差だったので、少しでも上のポジションに持っていけなかったのはドライバーとして悔しいですが、現状ではこれが僕らに出せる力なのかなと思っています」 こういった状況では、決勝に向けても『やるべきこと』はシンプル。そこにフォーカスしていきたいと、可夢偉は前を向いた。 「諦めない気持ちで、ひとつでも前に行けるように、チーム一丸となってやるしかない。正直、何か秘策があるわけではないので、ただひたすら辛抱強く、チャンスがあったらトラフィックをうまく利用して前に行く、という戦いをしなければいけないと思っています」 [オートスポーツweb 2024年09月01日]