マクラーレン・アルトゥーラ 詳細データテスト 改良されたエンジンとシャシー 冷静からやや情熱的に
はじめに
マクラーレンはかつて、同じクルマのバージョン違いを、パワーの大小で増やしているだけだ、と言われたものだ。ある意味、それは正しいかもしれない。ほぼ同じカーボンモノコックとリカルド製の4.0LツインターボV8を使い回し、世代も価格帯も異なるさまざまなモデルを生み出してきたことが理由だとすれば納得できる。 【写真】写真で見るマクラーレン・アルトゥーラとライバル (7枚) 新たな基盤技術の開発に多額の投資を重ねては、ビジネスが立ち行かないのは確かだ。しかし、フェラーリは同じ時期に、V8とV12をを用意し、しかも自然吸気やターボのバリエーションを揃えていたのだから、マクラーレンの肩ばかり持つことはできない。 そうはいっても、この英国のスーパーカー専業メーカーが、変わり映えしないクルマばかりを作り続けてきたのかといえば、そんなことはない。彼らはコンスタントに、プロダクトのリファインに努めてきた。それも、多くのユーザーがたいして気にしないようなディテールまでもだ。基礎は同じままかもしれないが、細部は進化を続けている。 新CEOとして、2022年までフェラーリの技術主任を務めていたマイケル・ライターズが着任したことで、このフィロソフィーはさらに強まったようだ。すでに、720Sは走りに関する部分が刷新され、750Sとなった。外観はほとんど変わらないが、この2台の詳細を知れば、別物だというだろう。 そして2024年、V6ハイブリッドを積んだマクラーレンのエントリーモデルであるアルトゥーラが、登場からたったの2年で改良を受けた。やはり外観の変化は、パワートレインやサスペンション、インテリアの変化を見落としそうなほどわずかだ。それらはスパイダーで導入され、クーペにも適用されたものだ。2022年型と2023年型のクーペの購入者もご心配なく。ディーラーでアップグレードを受ければ、20psアップの701psを手に入れられる。 もちろん、多少でもパワーアップするのは歓迎だ。しかし、もっと重要で興味深い変更も施されている。今回はアルトゥーラ・スパイダーを、公道とクローズドコースで試した。はたしてパーソナリティまで変わったのか、たとえばシャープさを高め、その活発さや楽しさでクラスのペースメーカー的なフェラーリ296に近づけたのかを確かめたい。