マクラーレン・アルトゥーラ 詳細データテスト 改良されたエンジンとシャシー 冷静からやや情熱的に
走り ★★★★★★★★★☆
さまざまな改良で、パワーは2%アップしたが、スパイダーはクーペより重く、テスト日の気温は低かった。それでも、このオープンモデルが固定ルーフモデルより速かったのは驚きだ。0-97km/h加速は3.1秒、0-241km/h加速は12.8秒で、クーペの3.2秒/13.2秒を凌ぐのだ。 フェラーリ296ほどとんでもなくはないにしろ、これはきわめて速いというのに十分なクルマだ。そしておそらく、少しばかり容易に楽しめる。というのは、フルスロットルにしても、いきなり額と手のひらに汗が噴き出すような張り詰めた領域に叩き込まれるわけではないからだ。マクラーレンのハイブリッドの調整が、それに寄与している。 追い越し加速では、力強いアキシャルフラックスモーターがやりすぎなくらいにクルマを前へと押し出してくれる。しかし不自然さを感じるような強さではないのだ。もしもターボユニットらしいエンジン音が聞こえなければ、5.0L級のV12を積んでいると言われても信じそうだ。それは、低回転域でのスロットル操作に対する素早い反応にも言える。 同時に、エンジンは負荷がかかると以前よりブーストが効いた感じがする。リアウインドウを開けると、このエンジンの独特な気流や音がコクピットに入ってくるが、それによる感覚的なものではない。このV6は、5000rpm以上でより激しく回り、6気筒によくみられるかすかな金属音もあって、緊迫感や冷たく強固な感じが強まっている。 ブレーキに関してマクラーレンは、踏みはじめがソフトなペダルを好む。これは左足ブレーキやサーキット走行に向いている。初期のセンシティブさは少ないほうが、踏み込んでいっての調整がしやすいためだ。 ところが、アルトゥーラは少し違う。ペダルの初期レスポンスはすばらしくはっきりしていてかなり早めだが、イタリア車のような過敏さはない。97-0km/hのタイムは2.29秒で、今年テストした750Sよりいいのだが、フェラーリ296には及ばない。あちらがミシュランのカップ2R、こちらが比較すれば普通寄りのピレリPゼロ・コルサを履いているのだから、この結果は予想できる。 それでも、113-0km/hの制動距離が39.2mというのは悪くない。また、ハードブレーキを6回繰り返しても、フェードの兆しさえなかった。失望させられるようなことはないだろう。 アルトゥーラはPHEVで、走行モードはコンフォート/スポーツ/トラックのほかにEVがある。メーターカウルの縁にあるロッカー式セレクターで選択すると、電力のみで34kmほど走るという触れ込みで、モーターだけでも運転はしやすい。 EVモードで屋根を開けて走ると、タイヤの息遣いのような音までが耳に入り、目新しくて楽しい走りが味わえるが、コンセプトカーを走らせているような奇妙な感じでもある。石が床下に打ち付けられる音や、サスペンションのリンクが発する金属音も逃さず聞こえる。 V6に火が入るとさらにおもしろくなる。トラックモードに入れて激しい風の音を感じながら、指先でDCTを変速して走るのはじつに気持ちいい。