医学部入試は難化傾向だが問題自体は易化!? 苦手分野の克服がカギ
私立医学部では脱「物理と化学」。生物有利の入試も
第3部は「2024年度 私立医学部入試最新分析」をメディックTOMAS市ヶ谷校の校長、萩原一裕さんが解説した。 まず、模試でA判定を取っても不合格になることが多々あるという。受験する大学が何を求めているかを押さえ、それに応える必要があるからだ。国公立大学医学部入試は共通テストが大きな比重を占めるので、対策はある程度共通する。しかし、私立大学は各大学が行う入試がすべてなので、対策もすべて違ってくる。学力が高くても、その大学が求めるものを提示できなければ、あっさりと残念な結果になってしまうのだ。たとえば、順天堂大学医学部入試の英語では200語のエッセイを書かせる。その対策を必ずしなければならないだろう。 医学部を卒業すると、その医学部の医局に所属し、医師として研鑽を積む。つまり、医学部入試は就職試験の意味合いもある。そのため、建学の精神や学是(教育上の根本的な精神として定められたもの)をしっかりと調べ、対策をする必要がある。個別面接やグループ討論などが課されるが、後者では話す力だけではなく、他の参加者の話をちゃんと聞く“傾聴力”も必要となる。医学部入試は「採用試験」の要素があるから、学力以外の部分も必要となる。 それでいて、もちろん高い学力が必要とされるのは昔も今も変わりはない。ただ、その学力の質は変化している。 かつては医学部受験というと何年も浪人をして入学する生徒が多かったが、今は現役が中心になっている。大学側も現役合格に配慮し、きちんと基礎を固めてきた受験生が受かるような試験にしているのだ。 中堅大医学部では「基礎重視」の傾向がより強くなる。難関大医学部ではその基礎の組み合わせを施した問題が出され、慶應医学部は計算が煩雑で高い処理能力を求める傾向がある。後者は問題が複雑になるため、より高い読解力や判断力が必要とされるが、知識面で問うていることはあくまで基礎であり、昔のようにマニアックな知識を問うことはない。 また、かつては医学部に合格するためには理科は物理と化学を選択する必要があったが、今ではそれも変化している。中堅大学においては、理科の選択科目で生物のほうが物理よりも有利なケースが増えている。医学部入学後に学ぶのは生物学系の内容なので、生物を選択した受験生を採用したいのだ。生物の素養がある生徒は、大学のカリキュラムにスムーズに対応できそうだと期待できるからだ。「最短で合格するために、計画を立て、逆算して勉強をしていくことが大切」と萩原さんは締めくくった。