医学部入試は難化傾向だが問題自体は易化!? 苦手分野の克服がカギ
少子化の中で大学受験もハードルが下がっているといわれるが、例外が医学部入試である。 社会貢献ができてやりがいがあり、かつ安定した収入が期待できる医師になりたいと思う生徒は多いからだ。そのため、私立大学医学部の大半で倍率が10倍を超え、関西医科大学の後期入試は124.7倍(2023年度)である。受験者の数だけではなく質も変化している。少し前までは「勉強ができるから医学部に行く」という傾向が強かったが、現在は明確に医師になりたいと希望する生徒が高2から全力で受験勉強に取り組み出すというトレンドだ。 その医学部入試は今どうなっているのか。本記事では、医学部受験専門個別指導であるメディックTOMASの「医学部入試分析報告会2024」をレポートする。 次の共通テストに新教科「情報」追加!その出題内容は?
共通テストは国立大学医学部の第一関門
会場は渋谷のセルリアンタワー東急ホテル。500席の8割以上が埋まる盛況ぶりで、保護者たちは熱心にメモを取り、受験生たちも真剣に話に聞き入っていた。 第1部は「医学部入試の傾向について」で、駿台予備学校 入試情報室部長 石原賢一さんが登壇。石原さんは大学入試分析のエキスパートで、メディアにもしばしば登場し、コメントを寄せている。国公立大学医学部受験を中心に話が進んだ。そこでまずは、国公立大学医学部受験の第一関門である共通テストを中心に石原さんのお話を紹介しよう。 大学受験人口はピークの1992年は121.5万人だったが、少子化の影響で、2024年は64.1万人である。しかし、国公立大学医学部入試は基本的に6教科8科目が課されるために対策が重要になってくるし、共通テストで1点でも多く取ることが合格につながってくる。特に後期試験は、個別試験(共通テストの後で大学が個々に行う試験)が小論文や面接などが中心になることもあり、共通テストの点数で合否が決まるといっても過言ではない。後期のみの募集をする山梨大学や、前期も個別試験が小論文のみという奈良県立医科大学を受験したいならば、共通テストの対策はより重要になってこよう。 また、国公立大学医学部入試ではまず、共通テストで受験者を絞り込む第一段階選抜が行われる。多くの国立大学医学部が採用する倍率方式の第一段階選抜ではハードルを上げ、個別試験の受験生の数を絞り込む傾向がある。受験生を少数にすることで、面接を丁寧にする大学が増えているからだ。そのため、共通テストで点を取らないと個別試験を受けることすらできない。共通テストが医学部合格の第一関門であることは間違いない。 その共通テストの2024年度の傾向としては、各科目で問われる内容の難易度は高まっていないが、問題文は長くなる傾向にあり、複数の文章や図表を提示して解かせる問題が増えている。実社会に即した題材も増えている一方で、国語では一時期、話題になった契約書を読み解かせるような実用的な文章の出題はなく、今後も出ないかもしれない。 全体の傾向として、過去問をやり込んでパターンを習得するだけでは解けない問題が増えている。まず、読解力が必須で、それをもとにした分析力や判断力を問われる問題が多い。今後も手を替え品を替えで、受験生にとっては「初めて見る問題」が出ることが予想される。