「より良い広告体験を提供するのがエージェンシー、あるいは掲載メディアすべての責務だ」: オプト ソリューション営業本部兼広告戦略・コミュニケーション本部執行役員 堤洋祐 氏
──一部のプラットフォームでは、「AIを使った広告審査」で詐欺広告が簡単に掲載されているという事実がある。
AIだけでは明確な審査をしきれていないのではないか。プラットフォーマーは積極的にAI投資を行っており、クリエイティブ生成や広告運用のアルゴリズムをAI化するなど、自動化を進めているが、エージェンシーとしてプラットフォーマーとコミュニケーションするなかで、多くのプラットフォーマーが人の手を加えて最適な広告審査をするということを重要な作業として認識しているようにも思う。 デジタル広告のなかでも、SNS広告は非常に伸びている分野だ。そのため、詐欺広告の話題など、SNS関連がクローズアップされてしまうということが多い。もちろん、広告出稿量の規模が大きくなるにつれて、リスクも大きくなっている感覚は我々にもある。
──詐欺広告ではないにしても、不適切なクリエイティブやフォーマットが跋扈(ばっこ)している現状がある。広告主とプラットフォーマーを仲介する立場として、そうした現状をどう感じているか?
ブランディングを主体としている広告主とパフォーマンスを主体としている広告主では、定めたKPIによって大きく価値観が違うのではないだろうか。ブランディングを主体としている広告主はアドフラウドなどの詐欺広告や市場全体の環境についての問題意識が強く、入稿基準も管理されている。 一方で、パフォーマンスを主体としている広告主ではどうしても広告効果を第一に考えるため、そういった意味では広告主のなかでも、求める効果は違うのだろう。
──パフォーマンスばかりを求める風潮に待ったをかけなければ、市場環境は良くならないという声もある。
一定のリテラシーが広告主側に必要なのは間違いない。ただ、ニーズや課題感も違うため、一方的に片方の考えを押し付けても状況は変わらないだろう。たとえば、アドフラウド対策を確実に行うことで広告成果が良くなることがあるように、両者の課題感とゴールをすり合わせることは可能だ。ここを高めることで、デジタル広告に対する見方も変わってくるだろう。だからこそ当社では、広告主のマーケティングを最適化するため、アドフラウド対策の啓蒙を進めているところだ。 もちろん、担当者レベルではどうしても効果を出したいというのが本音だろう。現場に求められるKPIと市場健全化の取り組みには矛盾がある。こうした問題は、経営層レベルが判断しなければ往々にして進まないのではないか。
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