「より良い広告体験を提供するのがエージェンシー、あるいは掲載メディアすべての責務だ」: オプト ソリューション営業本部兼広告戦略・コミュニケーション本部執行役員 堤洋祐 氏
──なぜ被害は減らないのか。また、どう減らせばよいか?
ここ数年でデジタル広告業界の裾野が大きく広がっており、広告運用に副業や個人事業主として携わる方々が増えてきた。プレイヤーが玉石混交となっているなかで、彼らがどれだけ精緻に業務を行っているのか正直なところわからない。「果たして、広告のプロとは何か?」という部分を、広告主には見極めてほしい。広告効果がどういった対策やスタンスで上がるのかということを、ファクトデータをきちんと出しながら説明あるいは啓蒙していくのが本来のプロだ。 また、どういった掲載面に広告が掲載されるのかということを広告主に認識してもらうことが大事だろう。我々のクライアントはダイレクトマーケティングが主体であることが多いため、広告効果のその先の影響を見ていくことが重要だと提案している。表面的なKPIに囚われていては、最終的に顧客の利益に繋がらない可能性もある。顧客体験の質までしっかりと追い、マーケティングを支援していくことも大切だ。
──市場健全化のための啓蒙という点ではどうか?
広告主とメディアとのあいだにいる我々エージェンシーが一番状況をよく理解できていると感じているため、理想としては我々のような企業がしっかりと広告主の声をメディア側に伝える、あるいはメディアの声を広告主に伝える役割を担うべきだと思う。 しかしながら、ウォールドガーデンの力が強まっているのは事実であり、広告市場において彼らがコントロールする領域が増えていることに間違いはない。本来、プラットフォーマーというのは素晴らしいテクノロジーで人々に利益を与えている。だからこそ、プラットフォーマー側にも業界が発展していくような仕組みや機能を実装していってほしい。
──デジタル広告の環境が今後解決しなければ、どういった社会になると考えるか?
前述したとおり、広告は最終的には消費者のためにあるものだ。より良い広告体験を提供するのがエージェンシー、あるいは掲載メディアすべての責務だと感じる。そうした広告の意義や信頼性がなくなり、広告自体が否定されることになれば、デジタル広告の存在意義は曖昧になり、衰退していくだろう。 デジタル広告がマスメディアの出稿費を超え、規模が肥大化してきているからこそ、そこに対する責任も膨れ上がっている。業界全体でより透明性を高め、安心安全なデジタル環境を作ること自体が業界発展の鍵になるはずだ。 当社はLTVマーケティングというテーマを掲げて、業務を推進してきた。透明性を意識し、顧客の近くで広告効果だけではなく、事業成長にまでコミットしていくというやり方だ。顧客の深いところまでエージェンシーが入り込み、事業支援をしていくことも解決策のひとつになるのではないか。 Written by 島田涼平 Photo by 三浦晃一
島田涼平
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