#折田さん頑張れ! 「兵庫・齋藤元彦知事問題」のヤバさは現代社会を表象している 北原みのり
テレビや新聞が斎藤さんをたたけばたたくほど、「斎藤さんが被害者になっていく」方程式。「何が真実かは本当にはわからない=報道は事実ではない」という社会的な空気。今回初めて政治に興味関心を持った(とご本人が記している)高学歴で優秀なPR会社の若い経営者が、政治的な信念ではなく、仕事として広報を引き受ける(とご本人が記している)ことへの軽々しさ。そして選挙のプロであるべき人たちが、ルールを知らずに闘っているらしいこと……そのくらいに、私たちの社会を動かしているのが「よくわからない空気」のようなものであること。 ここまで書いた段階で、斎藤さんの記者会見を見た。記者たちはかなり斎藤さんを追いつめる質問をしていたが、斎藤さんは全ての質問にAIのように「代理人弁護士に一任している」だけを繰り返した。「知事にしか、答えられない質問だから聞く、今、どう思うか?」とった質問にも明解に答えられず、「公職選挙法に違反していないと思う根拠はなにか」という質問にも歯切れがとても悪かった。つまりは、「自分が公職選挙法に違反している認識はないから違反していない」とつぶやき続けているような記者会見だった。 斎藤さんの目は、少しだけ、私には怖い。目がほとんど動かず、人と目をあわせている感じがなく、どんな質問にも同じ声のトーンで答える。何を考えているのかが全くつかめないのに、「高校生からやめないでという手紙が来た」という「感動話」を淡々と語る。今、どういう状況にご自身がいるのかわかっているのだろうか。 今、斎藤さんが語るべきは、「本当のこと」だ。「言えないこと」が積み重なり、「推測すること」が積み重なり、「何が事実かわからない」空気のなかで、政治家に求められるのは、嘘をつかず、責任を果たし、懐の深さを見せ、感情を出し、人々に本当の言葉を届ける人だ。斎藤さんの心のない、責任のない、意味のない記者会見を聞いて強くそう思う。そして全方向で叩かれているPR会社社長の折田楓さん、怖いかもしれないけれど、本当のことを堂々と言ってほしい。#折田さん頑張れ! である。
北原みのり