#折田さん頑張れ! 「兵庫・齋藤元彦知事問題」のヤバさは現代社会を表象している 北原みのり
作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は兵庫県知事選挙と斎藤元彦知事とPR会社社長について。 【写真】PR会社社長の投稿したnote * * * つばさの党の人たちはまだ塀の中にいるという。 今年4月、東京15区で行われた衆議院議員の補欠選挙中、他陣営の選挙活動を妨害したとして、「つばさの党」の代表らが5月以降に逮捕・起訴され、半年間にわたって勾留されている。「選挙の自由妨害」を犯した公職選挙法違反の罪に問われている。彼らは、小池百合子都知事が現れたら「おい、嘘つき」と呼びかけ、維新の候補者には「大阪ぶっ壊しておいて今度は東京をぶっ壊すつもりか?」とがなり立て、乙武洋匡さんには「不倫はダメだぜヘイヘイヘイ」とふざけ、百田尚樹さんらの日本保守党には「日本を壊した安倍晋三を崇拝して、保守とか言っちゃってる。頭悪すぎ」と一蹴し、れいわの山本太郎さんに対しては「洗脳をするな!」と叫ぶ……傍から見たら乱暴だが、言っていることは「確かに」と思っちゃったりもしたのであった。でも、そういった「本音」を、思うだけではなく、マイクでがなり立て、大騒ぎし、候補者の演説が聞こえなくなるレベルだと逮捕されるのである。公職選挙法とは、かくも厳しい。民主主義の根幹である選挙を守るために、とてつもなく、厳しい。 先の兵庫県知事選挙で「(斎藤元彦陣営の選挙の)広報全般を任された」と公開したPR会社の社長の投稿が今、世間を賑わせている。県庁職員が自死した説明責任を問われるも何ら明らかにならず、日本全国から知事としての資質を問われ、失職して孤立無援状態であった斎藤さんが、有権者の心を次第に掴み、「斎藤さん、頑張れ!!!」の熱狂に包まれていく過程には、自身のPR戦略の成果であることが詳細に記されていた。 社長の投稿には、「SNSを活用して『斎藤知事を応援したい』『兵庫県をよくしたい』という想いをプラットフォーム化し、ムーブメントを起こす!!! 狙い:県民にメッセージを投げかけ、今回の選挙を自分ごと化、さらには応援してもらう」という提案の資料が紹介されている。今回の選挙ではSNSの影響力が大きかったことは、当選後のインタビューで斎藤知事も認めている。それまでメディアで批判される斎藤知事を「ここまでたたかれているのに、なぜ辞めないんだ?」と疑問に思っていた多くの人々が、SNSを通して「斎藤さんはメディアの被害者だったんだ!」と意識が変わっていき、選挙が自分ごとになり、斎藤さんを応援しなければ! と、積極的に演説に足を運び、選挙を盛り上げていくというムーブメントが生まれたのだ。それはそれは、PR会社としては最高の充足感を味わったことだろう。社長の投稿では「選挙は広報の総合格闘技」という名言が残されている。そこには勝者の酔いを感じる。