#折田さん頑張れ! 「兵庫・齋藤元彦知事問題」のヤバさは現代社会を表象している 北原みのり
感心する。このPR会社の社長さん、優秀である。自分の仕事に忠実で、クライアントに誠実で、努力を惜しまず、アイデアを形にしていく。ネット戦略に長けたこういうPR会社の社長がいたからこそ、斎藤さんは、1カ月前までは誰も想像していなかった快挙を成し遂げたのであろう……などと、私など、素直に感心してしまいそうなのだが……危ない、危ない。SNSなどの広報をお金を払って依頼することは、そもそも公職選挙法に違反することなのであった。知っていましたか? たぶん、フツーの人は知らない。その証拠に多くの人が、このPR会社の社長のXやインスタなどに「お疲れ様でした!」といった好意的なメッセージをリプライしている。 とはいえ……今回のことで明らかになったのは、もしかしたら斎藤さん自身も、公職選挙法、読んでないのではないですか?という大いなる疑問である。読んでいたとしたらすごくヤバく、読まないでやっていたとしてもヤバい。いずれにしても、このような投稿が公開されてしまう超脇甘な背景には、斎藤陣営に、「選挙のルール」の無視/軽視/無知があったということは否めない。今、SNS上では、PR会社の社長が若い女性ということもあり、ミソジニーを交えた批判が飛び交っている。「無能な味方に後ろから刺された斎藤さん」という嘲笑も多く目にする。そして今のところ斎藤さんは、PR会社の社長について「彼女はボランティアの一人」と主張している。先週金曜日にこの件で代理人になった弁護士は、本人が記者会見で認めたように選挙中のことやPR会社社長の投稿を全て把握しているわけではないのに、「(PR会社の社長は)盛っている」と言い切った。SNS上では「籠池される」という言葉も生まれているが、斎藤さん側の言い分が正しいのなら、PR会社の社長は妄想と自己顕示欲が激しいおかしな人……となってしまう。気の毒である。 それにしても一体……2024年ももう少しで終わるというのに、この半年間、私たちはどれだけ兵庫県知事問題にひきずられているのだろう。そしてなぜ、こんなにも斎藤さんを巡る「物語」は、これほどまでに「現代社会」の上澄みをきれいにすくいとって表象してくれるのだろう。