【なぜ】“袋小路”の『北陸新幹線延伸』 詳細ルート決まらず着工ずれ込みへ「千年の愚行」京都の反対機運と早期開業求める北陸選出議員の苛立ち…カギを握る来夏の参院選
北陸新幹線で未着工となっている敦賀~新大阪間を巡る与党内の議論がこの年末、詳細ルートの決定目前まで行きながら、結論を出すことが出来なかった。来年度末を目指していた本体着工時期はずれ込み、次なる着工のめどすら打ち出せていない。人件費や物価高で概算建設費も3兆円台に膨れ上がったほか、京都市内では『反対』の機運が高まりつつあるなど、事業そのものが“袋小路”に迷い込みつつある。「歯車」はどこでかみ合わなくなったのか。(報告:髙橋克哉)
■京都市内の3つの案を一本化→来年度末に着工予定のはずが…
「福井の事が書いていない!」 12月18日、自民・公明両党で作る「与党整備新幹線建設促進与党プロジェクトチーム(PT)」の下部組織「北陸新幹線整備委員会」(委員長・西田昌司参院議員)が非公開で行った会合で、福井1区選出の衆院議員・稲田朋美元防衛相が声を荒らげると、会場は静まり返ったという。この日は2025年度当初予算案を見据えた「中間報告」を採択する予定だったが、稲田氏の発言で文言修正を余儀なくされ、結論を持ち越した。 稲田氏の"怒り"の根源を解き明かすには、敦賀以西の延伸をめぐる今年の経過説明が必要だ。
国の2025年度当初予算をめぐる焦点は、地下を走る京都市内中心部のルート選定だった。国土交通省などは8月、最後まで未定だった京都市内のルートについて、①既存のJR京都駅付近を南北に通す「南北案」と②東西に通す「東西案」に、③京都駅から南西におよそ5キロ離れたJR桂川駅付近に北陸新幹線新駅を設置する「桂川案」の3案を与党に示した。いずれも、地上から40メートル程度深い場所を通る「大深度」の地下案だ。 与党は、年内にこの3案を1つに絞ったうえで、2025年度当初予算に敦賀以西の本体工事費を盛り込み、同年度末の本体着工を目指していた。与党整備委も12月初旬までは、その「ゴール」に向けて議論を加速化させてきた。
■“事実上の反対”京都市長が4つの懸念表明 「急がば回れのタイミング」
ところが、12月13日の整備委に招かれた京都市の松井孝治市長は、「1本化以前の問題」として、①地下水などの環境影響、②工事で出る残土処分方法、③工事期間中の交通渋滞、④財政負担の「4つの懸念がある」と指摘した。 与党整備委内では当初「明確に反対しなければ一本化を進めても良いのではないか」との声もあったが、限りなく「事実上の反対」に近い松井市長の意見表明に、会合後は慎重な議論を求める声が相次いだ。 「市長の同意」は厳密には着工の必須条件ではないが、整備委メンバーの1人は「静岡県のように議論が停滞することだけは避けなければならない。ここは『急がば回れ』のタイミングだ」と語った。「静岡」とは、川勝平太前静岡県知事のことである。リニア中央新幹線の建設をめぐり、水資源への影響などを指摘して事業が膠着状態となったことは記憶に新しい。
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