【なぜ】“袋小路”の『北陸新幹線延伸』 詳細ルート決まらず着工ずれ込みへ「千年の愚行」京都の反対機運と早期開業求める北陸選出議員の苛立ち…カギを握る来夏の参院選
■“整備新幹線”与党PT「地元反対ありえない」との固定観念か
建設推進の与党はなぜ、「京都の懸念」に正面から向き合ってこなかったのか。複数の議員に話を聞いても明確な答えは得られないのだが、取材を続けていると、与党内に「新幹線はひとえに与党の差配で決まるもので、地元反対などありえない」という固定観念はあるのではないか、との疑念が生じる。 整備新幹線の着工計画は、かつては「ミスター新幹線」との異名を持った小里貞利元労相など特定議員のリーダーシップで決まる時代から、現在の与党プロジェクトチーム(PT)による集団検討方式に至るまで、一貫して政府与党が差配してきた。 この基本構図は2009年から12年までの民主党政権でも引き継がれ、自民党など野党議員の「口出し」は許されなかった。「コンクリートから人へ」を掲げて政権交代を遂げた当時の民主党も、整備新幹線にはそれなりに熱心で、現在の「着工5条件」(①安定的な財源見通しの確保②事業採算性③投資効果④JRの同意⑤並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意)の枠組みを作ったのも、この条件の充足を確認して金沢~敦賀間の着工認可も民主党政権時代だった。いずれも熱烈な地元からの後押しがあっての動きだったことは言うまでもない。
■カギを握る来夏の参院選 PT委員長、反対の共産、維新新人…前原氏は「米原派」急先鋒
ただ、北陸新幹線の京都市内への乗り入れをめぐっては、今のところ地元からの熱烈な要望の声は聞こえてこない。京都市内には半世紀以上前に東海道新幹線が開通していて、「北陸」が死活的に重要なものではないためだろう。新幹線が開業すれば即効で経済効果が見込めたこれまでの整備新幹線計画とは置かれている状況が根本的に異なるのだが、一連の与党内の議論を見ていると、この「特殊性」に着目した議論が行われた形跡は見当たらない。 似たような事例では、約40年前に開通した東北・上越新幹線の建設工事の際、埼玉県や東京都北部で反対運動が起きた。すでに都市が形成されている首都圏の市街地を新幹線が高速で走り抜けるの は、メリットよりも騒音などのデメリットが上回るという懸念だった。結果、大宮以南では在来線並みの速度制限をかけることや、平行して埼京線を新設することなどで地元と折り合った。 京都市内に、北陸新幹線と並走する地下鉄をもう1本通せばよい、という単純な話ではない。地元の懸念に耳を傾け、北陸新幹線が通るメリットは何かを具体的に説明するプロセスが求められているのだ。そういう意味では、このタイミングとはいえ、与党が「地元の懸念払しょく」(西田氏)を打ち出したのは、巡り巡って一歩前進と言える。 そして、こうした京都の「民意」を聞く最初の機会となりそうなのが、25年夏の参院選だ。 参院京都選挙区で改選を迎える現職は、与党整備委で委員長を務める西田氏と、共産党の倉林明子氏(64)の2人。共産党は北陸新幹線の敦賀以西の延伸に反対を表明している。日本維新の会は新人で元関西テレビアナウンサーの新実彰平氏(35)の擁立を決めている。 維新の前原誠司共同代表(衆院京都2区)は馬場伸幸前代表とともに、滋賀県東部を通り米原駅へと接続する「米原派」の急先鋒の一人だ。吉村洋文代表は、大阪府としては「小浜・京都ルート」を支持するが、参院選までに党代表としての見解が求められるだろう。 いずれにせよ、都大路の大深度を突き抜ける北陸新幹線計画は「第二の平安遷都」というべく国家的プロジェクトか、「千年の愚行」か。2025年の参院選京都選挙区は、3兆円以上に膨らんだ建設費用とともに「新幹線の是非」が一大争点となる、珍しい国政選挙になるかもしれない。
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