12年ぶり全豪OP初戦敗退に錦織圭は何を思ったか…「メンタルダメージはあるがトップ10復帰の道のりが若干見えた」
悔しさとショックはある。 だが、それ以上に完全復活への糸口が見えたことが収穫だった。 「3セット目は別にしても今までにないくらい出だしは凄く良かった。試合に入ってから“勝てるんじゃないか”という出だしだった。ボールをとらえる感覚、球筋とか、いろいろと良かった。ただ相手も簡単にミスしてくれないし、バックのクロスもフォアのクロスもディフェンスに回らないといけなかった。強いなと感じた」 感覚やボールの球質。そこに満足感がある。 新型コロナの影響で万全の準備ができなかった。 米国からオーストラリアへ移動した際のチャーター便の同乗者に陽性者が出たため、2週間の完全隔離を余儀なくされた。本来、1日5時間の練習が可能だったが、それもできなくなり、対人練習は封印された。 「2週間(ボールを)打てなかったのはつらかった。ちょっと考えることはある」 新コーチを迎えて、サーブの改善に取り組んでいる錦織にとって、この時間のロスは痛かった。 「風下でのサービスゲームでのサーブが良くなかった。ロックダウンがあって調整ができていないこともあった。サーブは課題」とも言う。 ATPカップでの2試合が“全豪前哨戦”となったが、いきなり世界ランキング4位のダニール・メドベージェフ(ロシア)、同9位のディエゴ・シュワルツマン(アルゼンチン)のトップ10の2人と対戦して2連敗を喫した。そのシュワルツマン戦から中1日での本番。右肩の怪我でブランクを作っていた錦織にとっては過酷なスケジュールだった。 「先週の2試合は不安すら感じる試合が続いた。肩の怪我もあり、フレンチオープンから試合があいて、いきなりトップ10の2人とやった。(試合勘を)取り戻すにはいい出だしではなかった。先週の体は、若干重たかった。それが(今日の試合に)響いているのが、もしかしたらあるかも。久しぶりの試合で筋肉痛とか(体に)重みは出ていた」 そんな状況でも「昨年復帰してから一番いい試合。あとは大事なポイントでのミスを減らすだけ」という試合ができたのである。 なぜ失っていた感覚を取り戻すことができたのか。 「(いい感覚を取り戻す時期は)いつかくるものだと思っている。復帰のときはいつもそう。でも、いい感覚というのは自分でもいつくるかわからず、試合に入る前に調子がいいとは思わなかったが、(試合に入ると)いきなり、いいイメージがあっていいプレーが出始めた。とくに何かをしたわけではない。先週の特にシュワルツマン戦が最悪だったので、それに比べれば大幅に良かった。昨年の復帰したての頃は、フォアミスがあったが、それもかなり減っている。あと、もうちょいかなと思っている」 勝負師の本能が大きな舞台で集中力に変わったのかもしれない。 大会前のマイナス要素を差し引くとプラス面だけが残る。 だからトップ10復帰への可能性を聞かれて、こう答えた。 「タフな道のり。今年できるかどうかはわからないが、今日の試合を振り返って、すごくいいプレーはできている。先週だったら戻れるとは言えなかったが、今日の自分のプレーだと、もう少し良くなれば、できそうかなと。若干見えてきた。(トップ10への)復帰の道のりとしては悪くない」