マインドフルネスを体験する宿 鎌倉で東京で、茶道・座禅・たき火で集中
■東京・町田の宿坊で禅修行体験
1629年建立、約400年の歴史をもつ東京都町田市の「簗田寺(りょうでんじ)」内に2023年春にオープンした「宿坊 泰全(たいぜん)」も、作務(=掃除、草木の手入れなど)や座禅などの禅文化をはじめとするさまざまな日本文化を体験できると評判のステイ先だ。 もともと簗田家は織田信長の家臣で、桶狭間の戦いでの一番の功労者とされている。同寺院はその菩提寺で、自然豊かな裏山に抱かれた境内には、簗田家の墓所や寺の建立にまつわる伝説をもつ龍王ケ池などを擁す。 開山自体は平安時代の中期だが、周辺の土地からは縄文遺跡が多数出土しており、太古から人々の営みが続いてきたエリアであることが分かる。現在も地域に根差す寺院として、参禅会や音楽イベントなどの文化・社会事業を積極的に開催している。 「泰全」があるのは、境内の庫裏(くり)をリノベーションした建物の2階。1階のレストラン「精進食堂 ときとそら」の奥の階段を上がると、和モダンなムードの共有スペース「空(くう)の間」が広がる。「簗田寺」の副住職の齋藤紘良氏はこれからの寺院のあり方を考えるにあたり、「パブリックでもプライベートでもない、コモンの場を作りたかった」と語る。「泰全」のオープンもその一環だ。 「時代の変化とともにお寺のあり方、使われ方が問い直されていますが、お寺の本来の存在意義は『心のよりどころ』です。いろいろな人が訪れて、お寺という場所を愛してくれることこそが、私たちにとっての財産。第二の故郷のような、よりオープンな場でありたいという思いから、境内でゆっくり過ごしていただくための新たな機能として、宿坊を立ち上げました」(齋藤氏)
■お香作り、居合道…自分と向き合う時間
こちらでは座禅や写経、作務などを体験できるほか、「泰全」の向かいにある「調香所まとい」にて、寺院の裏山で採取した植物などを用いたお香作りも可能。乾燥させたクマザサやドクダミ、クワの葉などを粉状にすり潰して固め、お香の形に整えていく作業は、一つひとつのプロセスに丁寧に向き合っていくことの大切さを思い出させてくれる。 また、「戸山流備前会」の指導による居合道の体験もできる。道着に着替えて日本刀の歴史や仕組みを学び、模擬刀で素振りを練習したのち、真剣試し斬りを行う。実際に試してみると、集中力が必要なのと同時に、リラックスした状態でないと動きにムダが出てうまく斬れないことに気づく。頭に浮かんでくる雑念を流し、心を鎮めて精神統一する時間は、まさにマインドフルネスなひとときと言えるだろう。