井之脇 海×上川周作。二人を脅かす日常に潜む「穴」ってなんだ?
松尾スズキさん翻訳の絵本を舞台化した二人芝居『ボクの穴、彼の穴。W』で、兵士役を演じる井之脇 海さんと上川周作さん。お二人が考える、日常に潜む「穴」とは? そこから抜け出す方法や、「穴」から連想するSNSとの付き合い方など、「穴」について幅広く伺いました。 PEOPLE NOW
戦場に残された敵対する二人の兵士。彼らは、それぞれの穴の中で、孤独に苛まれ、妄想に駆られ、見えない敵におびえています。その姿はまるで、現代という〝戦場〟で、与えられた情報にとらわれ、容易に本質に近づけない我々の日常そのもののようで……。 松尾スズキさん翻訳の絵本を舞台化した二人芝居『ボクの穴、彼の穴。W』(翻案・脚本・演出:ノゾエ征爾さん)が9月17日(火)より東京・スパイラルホール、10月4日(金)より大阪・近鉄アート館にて、Wキャストで上演されます。 兵士役を演じるのは、不器用で実直な役柄を演じることが多い井之脇 海さんと、朝ドラ「虎に翼」で主人公の素朴な兄役を好演した上川周作さん。ともに好感度の高いお二人が考える、日常に潜む「穴」とは? そこから抜け出す方法や、「穴」から連想するSNSとの付き合い方など、「穴」について幅広く伺いました。
自分を守るための穴が自分を閉じ込める穴になっている
── 「穴」がタイトルにもなっている本作ですが、そもそも、本作における「穴」ってなんだと思いますか? 上川周作さん(以下、上川) 戦争を体験していない僕の身近にある穴……自分にとっての穴ってなんだろう? ということをすごく考えました。いろいろ思う中で辿り着いたのは、安心できたり、居心地のいい場所でもあるということです。けれど同時に、その穴にハマりすぎてしまうと、大切な何かが見えなくなってしまう場合があるなと。 僕らが演じる兵士は“戦争のマニュアル”を渡され、そこには「相手を見たら銃を向けなさい。でないと自分が殺される」というようなことが書いてあります。戦時下ゆえの洗脳に近いと思いますが、思考を奪われ、盲目的に行動するのはとても危険なことだと感じました。