畑に立ち入り、路上駐車…… 迷惑観光客のせいで「駐車場利用税」! 北海道美瑛町が立ち向かうオーバーツーリズム問題
オーバーツーリズム観光地には4つのパターンがある
リクルートの長野氏は、オーバーツーリズム観光地を4つの型に分類できると話す。 「オーバーツーリズムは『都市型』『リゾート型』『自然型』『アイランド型』に分類できます。都市型は京都や鎌倉などの都市部、リゾート型の代表地には軽井沢などがあります。自然型は富士山や屋久島、アイランド型は西表島が該当し、美瑛町はアイランド型に近いと考えられます」(長野氏) 美瑛町が該当するアイランド型オーバーツーリズムの定義は「リゾート型に類するが、離島や山間の集落など、周辺都市からアクセス手段が限定される地域」。オーバーツーリズムにより、自然環境や住民の生活への悪影響が起き得るという。 長野氏は続けて、住民のオーバーツーリズムに対する意見は「不安」「不快」「不利益」の3つに分類できると話す。 不安は「安価なホテルや小売店がなくなってしまう」など、従来の良さやアイデンティティーが損なわれることへの懸念だ。不快は「路上でお酒を飲む人がいる」「大声で話す人がいる」といったモラルに対する嫌悪感が該当する。不利益は「混雑でバスに乗れない」「食べ歩きしながら店に入ってきて、展示品が汚れる」といった具体的な実害に対する意見である。このうち、美瑛町では不快と不利益に関する意見が目立つと角和町長は話す。
反対に屈せず、対策を進めるべきだ
長野氏によると、観光地付近の住民による不安や不快は、混雑する場所で顕著に現れるという。その解消のため、角和町長は今後「駐車場利用税」と「宿泊税」を導入し、オーバーツーリズム対策の財源とする予定だと話す。 駐車場利用税は青い池の駐車場にて、通常の利用料に加算する形で徴収する。普通車は現在500円だが、1000円の税を加算して1500円になる予定だ。駐車場利用税の導入に関しては以前から報道されており、SNSでは「もう行かない」「高すぎる」などの意見が散見された。しかし、それこそが対策の狙いといえる。 昨今、美瑛町だけでなく、国内の観光地で入場料の導入や値上げが進む。多くの消費者からは否定的な意見があるものの、有料化や値上げは質を向上する効果がある。例えば、東京ディズニーリゾートは値上げや年間パスポートの廃止によって、チケット以外の物品・飲食販売が増加し、客単価が大幅に上昇した。 他の観光地でも、有料化によってゴミ捨てなどのマナー違反が大きく改善した例はある。一部の反対こそあれ、美瑛町の取り組みも不安と不快、不利益の解消に貢献するはずであり、他の自治体も続くだろう。
著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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