三者三様のGT300チャンピオン争い。気負わず戦うか、スピードで優るか、最後に笑うのは/スーパーGT最終戦鈴鹿
12月7~8日に三重県の鈴鹿サーキットでチャンピオンが決まる2024年のスーパーGT。GT300クラスは65号車LEON PYRAMID AMG、88号車VENTENY Lamborghini GT3、2号車muta Racing GR86 GTの3台が争うことになる。それぞれどのようにレースを戦うのか金曜搬入日に聞いた。 【写真】車検に向かうVENTENY Lamborghini GT3/2024スーパーGT第5戦鈴鹿 ■首位LEON篠原、初王者に向けて「いつもどおりが大事」 84ポイントのランキングトップで臨む65号車LEONは、3台のなかで唯一、自力タイトル決定の権利を残している。仮にタイトルを取ればチームと蒲生尚弥にとっては2018年以来の二度目、篠原拓朗にとっては初のスーパーGTタイトルとなる。 その篠原は「一年の最初に『チャンピオンを獲る』という目標を決めて戦っているので、チャンピオンは獲りたいですし、獲ることができたらすごく嬉しいです」と目を輝かせる。 「今いちばん有利な状況で最終戦に臨むことができていますけど、だからといって急にいつもと何かを変えることは考えておらず、いつもどおりのことをやるのが大事だと思っています」 今回の最終戦は8月31日~9月1日に行われるはずだった第5戦の延期開催となる。例年だとシーズン最終戦は11月上旬に行われているが、今年は12月という時期に加え、サクセスウエイトなしでのレースという未知の要素が多い。 そのことについては「正直、明日走ってみないとわからないです。やはり12月のレースなので読めない部分は多いです」と続けた篠原。週末の目標を以下のように語る。 「ある程度しっかりとポイントを獲得できるような位置にいたいです。有利ではありますけど、ポイントを獲得すればタイトル確定というわけでもないですし、やはり走ってみないとわからないことが多いです」 「なので『欲をかき過ぎず』にレースをしたいですね。チームのミーティングで話をしても『いつもどおり』からそこまで離れることはありません。逆に言うと『いつもどおり』のほうがレースをしやすいと思っています」 ■シーズン4勝目を狙う88号車VENTENYランボルギーニ 「いや~(65号車LEONと)11ポイント差は大きいよね。その条件でどう戦うかと言われても『もう予選からポールポジションを獲って勝つ』しかないんじゃないかな』と言うのは、ランキング2位につける88号車VENTENY Lamborghini GT3の伊与木仁エンジニア。 今季2024年シーズンからJLOCに電撃加入した伊与木エンジニアは、第2戦の優勝を皮切りに第7戦と第8戦を制し、いきなり3勝を挙げた。GT500クラスでのチャンピオン経験も持つ“名将”が気にかけるのは、自身が今年から88号車VENTENYを担当しているということ。 「12月のレースという部分で言うと、条件は彼ら(65号車、2号車)と同じかなとは思っています。ただね、僕は今年から88号車を担当していることもあって『ランボルギーニ通』ではなく、さらに言うとブリヂストンタイヤの経験は豊富だけど、ヨコハマタイヤは今季が初めてなので、本当にまだよくわかっていません」 第3戦の結果からも「鈴鹿で結果が良いイメージは正直ない」と自信なさげに語る伊与木エンジニア。今回は「本当にやってみるしかない」と語りつつも、シーズン4勝を狙っていくと意気込む。 「個人的な部分だけで言うと、例えチャンピオンにはなれなくても『勝って4勝』をすればチャンピオンも付いてくるのではないかなと思っています。あと、もちろん則竹さん(功雄JLOC代表)にチャンピオンを獲らせてあげたいという思いもあります」 「タイトルを獲得したら則竹さんのガレージからランボルギーニを一台もらえるかもしれないからね(笑)。それは冗談だとしても、ずっと前からチームに誘ってもらっていて、今年加入してから僕は本当に好き勝手やらしてもらっています。その恩返しでタイトルを獲得できればいいし、そのうえで4勝もプレゼントできたらいいですね」 ■「戦術より、完全スピードレース」の2号車muta GR86 そんな2台に対して、ランキングトップから20ポイント差の2号車muta Racing GR86 GTは、予選3番手以上かつ決勝1位フィニッシュがタイトルへの最低条件となる。 チームの渡邊信太郎エンジニアは「もう常にマックスで走り切るしかないので“全力で走る”ということだけです。予選でフロントロウを取ることができなければ『もう無理』という感覚で臨みます」と厳しい戦いを予想する。 「鈴鹿の場合、とにかく予選の順位が非常に重要になってきます。なので、まずはフロントロウに並ぶことがすべてです。これは全チームがそうなのですけど、12月の鈴鹿でレースをしたことがないので、多くのことが未知数です」 「また、ブリヂストン同士で選手権を争っているので詳しい話はしてくれませんが、今回はブリヂストンユーザーのなかでも(選択肢が)別れている様子です。なので変な言い方かもしれませんが、どのタイヤが当たるか分からないですし、全員が外してしまうかもしれません。その部分は本当にやってみないと正直わかりません」 今回のレースは日没時間などを考慮して、当初の350kmから300kmにレース距離が変更された。そのことも考慮すると、渡邊エンジニアは「戦術的にうまみがなく、鈴鹿はタイヤのデグラデーション(性能劣化)が大きいので、タイヤ無交換のメリットが非常に少ない」と決勝を見据える。 「戦術より、完全スピードレースで、予選から上位にいくだけ」と締めた渡邊エンジニア。12月の本戦という誰も経験したことのない最終戦鈴鹿で笑うのは誰になるか。まず予選での三者三様の戦いが勝負の分かれ目になるだろう。 [オートスポーツweb 2024年12月06日]