逆襲の「CB」。ホンダ「CB750F」投下でライバルに侵略された欧州スポーツバイク市場を奪還!
DOHC16バルブエンジンと独創の車体デザイン
1969年に、世界中のバイクファンへ衝撃を与えたホンダ「ドリームCB750フォア」は、北米、欧州、日本で爆発的ヒットとなり、ホンダに大きな収益をもたらしました。しかしライバルメーカーから次々と発売される4気筒マシン群によって、特に欧州市場では販売的に厳しい状況に追い込まれます。 【画像】「かっこよすぎ!」ホンダ「CB750F」(1979年型)を画像で見る(12枚)
当時の「CB750フォア」は現在のラインナップのように数ある車種の1機種ではなく、ホンダのフラッグシップ的存在だったため、これは由々しき事態です。 ホンダは水平対向4気筒エンジンを搭載する「GL1000」(1975年)をリリースしましたが、1970年代中期の大型バイク市場には「世界に唯一」ではなく、ライバル達に負けないものが必要でした。 ライバルメーカーは高性能なDOHCエンジンをスポーツバイク市場に投入します。さらに1978年までにホンダ以外の3メーカーはそれらを発展させて、海外市場には1000ccクラスにDOHC4気筒エンジン搭載車をラインナップします。 ホンダは毎年のようにアップデートを続けていましたが、もはや「CB750フォア」に技術的優位性は無く、ニューモデルの登場が心待ちにされていました。 そうして1978年12月、ついに新型「CB750K」が発売されます。4本マフラーの「CB750K」は「CB750フォア」シリーズの正常進化版という佇まいでしたが、エンジンには他社を上回るハイメカニズムの4気筒エンジンが搭載されていました。 オーセンティックなスタイリングの「CB750K」に対して、翌年の1979年に追加されたのが、走りに徹したスポーツモデル「CB750F」です。
大型バイクならパワーも十分という時代から、大型バイク同士でパワーを争う時代に入っていました。 最も高性能なバイクが一番人気を得るのが大型スポーツ車の世界です。そんな市場で、ホンダ人気を再燃させるため「CB750F」(欧州向けには「CB900F」)は投入されました。 ライバルよりも大きなパワーを出すためには、エンジンがより多くの空気とガソリンを吸って燃やして吐き出せる構造が必要です。当時のライバル車は「CB750フォア」よりも正確に吸排気を制御できるDOHCシステムを採用していました。 そこで、「CB750F」ではDOHCを採用した上で、さらに吸入と排気の通路を広げるために、バルブは吸入2本と排気2本ずつ配置します。この4本のバルブをそれぞれ4気筒に設置するため、合計16バルブとなります。 「DOHC16バルブ」というメカニズムはレーシングマシン的な構造で、この時代に大量生産の一般市販車に採用されていったものです。その言葉の響きは緻密なハイテク構造や高性能を象徴するキーワードでした。 そういった「CB750F」のメカニズムは、ボルドール24時間レースで活躍した「RCB1000」の技術を活かして開発されていることも宣伝に加えられました。