<全国学力テスト>結果公表問題が再び波紋 どう考えればいい?
文部科学省が実施する全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果について、静岡県の川勝平太知事が国語Aで成績が全国平均を上回った公立小学校の校長名を2年連続で公表したことが波紋を広げています。全国学力テストといえば、市町村別や学校別の成績公表が今年度から「解禁」されたはずです。この問題をどう考えればいいのでしょうか。
静岡知事が2年連続で公表「先生の責任」
静岡県での公表問題は、昨年にさかのぼります。静岡県が小学校6年生の国語A(主に知識を問う問題を出題)で最下位となったことに、「先生の責任だ」と川勝知事が激怒。下位100校か平均点以下の校長名を公表したい考えを表明すると、県教委や文科省が反対し、結局は川勝知事が「上位でも下位でもいい」と全国平均を上回った86校の校長名を50音順でホームページに載せました。学校名は伏せているものの、対照すれば容易に特定できます。 全国学力テストの結果公表をめぐっては、今年度から実施要項が改定され、都道府県教委が市町村別の、市町村教委が学校別の成績を公表していいことになりました。ただし、市町村や学校の同意を得ること、単に成績だけでなく分析や改善方法も併せて示すことなどの条件を付けています。 静岡県は今年度、小学校国語Aの成績が全国平均を下回ったものの、その差は5.0ポイントから0.1ポイントに縮小し、順位も47位から27位に上昇しました。こうした結果に川勝知事は「学力は先生次第で上がることが証明された。努力をたたえたい」として、今年度も昨年度と全く同じ方法で公表に踏み切りました。
開示請求に首長の主導で公表広がる
全国学力テストの成績公表問題は、導入以前から論議を呼んでいました。 調査の実施主体はあくまで文科省であり、文科省の実施要領に従うべきだ、というのが文科省の一貫した立場です。しかし、いくら実施要領に情報公開法上の「不開示情報として取り扱う」と定めたとしても、実際に開示請求があった場合には拒否できないのではないか、と指摘されていました。実際に2007年の開始以来、鳥取県や埼玉県、大阪府、秋田県などで相次いで開示請求が行われ、情報公開審査会答申や地裁判決などを経て開示が行われています。 また、首長が独自に成績を公表しようとする動きも各地で起こっています。 文科省が公表解禁に踏み切ったのも12年10月、大阪府泉佐野市の千代松大耕市長が学校別成績の公表に踏み切ったことがきっかけでした。13年度も公表する方針を表明すると、文科省はいったんテスト参加を認めない意向を伝達。協議の末、下村文科相が14年度から実施要項を見直す方針を表明し、その場は収まりました。有識者会議での検討を経て、先のような条件付きで公表を認めることになったのです。