<全国学力テスト>結果公表問題が再び波紋 どう考えればいい?
「親の収入高いほど好成績」の実態も
文科省が市町村別・学校別成績の公表方法にこだわる最大の理由は、1956~66年に行われた旧全国学力テストでテスト対策中心の授業が行われたばかりか、教師が答えを指差したり、成績不振の子どもを休ませたりするなどの問題が各地で起こり、日教組による激しい反対運動も招くなどの苦い経験があったからでした。ただし、もう一つの大きな理由があります。そもそもテストは何のために行うか、という問題です。 全国学力テストの「再開」を提言した05年10月の中央教育審議会答申は、義務教育の目標(インプット)を示した国の責任で成果(アウトプット)の検証を行う一方で、目標に沿った実施(プロセス)は市町村や学校が担うべきだ、との考えを示しました。そこで国に対して「全国的な学力調査」を実施することを提言するとともに、都道府県から権限を委譲された市町村が、結果を基に、責任を持って学校の改善を図るよう求めたのです。
成績は、必ずしも学校の責任ばかりとは限りません。07年度からの全国学力テストの結果分析では、生活保護世帯を多く抱える学校の成績が振るわないだけでなく、保護者の収入が多いほど児童生徒の成績も高くなる実態が浮き彫りになりました。学校の置かれている条件によって、学力は既に左右されるというわけです。一方で、そうした不利な環境下にあるにもかかわらず独自の取り組みによって好成績を上げている「効果のある学校」(志水宏吉大阪大学大学院教授)が少なからず存在していることも明らかになりました。 肝心なのは、そうした「効果のある学校」をどう増やすかです。それには学校を競争させて教師の奮起を促せばいいのか、予算や人事など教育行政のてこ入れが必要なのか、各自治体でデータに基づく検証と政策論議が求められます。全国学力テストは、そのために行うのだと言っても過言ではないでしょう。 (渡辺敦司/教育ジャーナリスト)